[caworld 2003開催]
オンデマンドはアウトソースでは成功しないのか?

2003/7/15

 米国ラスベガスで開催中の「caworld 2003」基調講演で登壇した米コンピュータ・アソシエイツ(CA)の会長兼CEO サンジェイ・クマー(Sanjay Kumar)氏は“On-Demand(オンデマンド)”の概念について、「マネジメント(管理)がその中核技術となる」とし、IBMやサン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカードが展開する“オンデマンド・コンピューティング”戦略とは異なる方向性を示した。

米コンピュータ・アソシエイツ(CA)の会長兼CEO サンジェイ・クマー氏

 純粋なアプリケーションベンダとしての立場と前述のハードウェアベンダとの立場の違いから、同一の概念でも切り口(あるいは市場に対する攻め方)が異なることがあるのだろう。IBMを始めとしたハードウェアベンダが提唱する“オンデマンド・コンピューティング”は、アウトソーシングをサービスの基盤に置き、システムの自律的な機能を進化させることで、顧客がITサービスをまさに水や電気のようなユーティリティとして活用できるコンピューティング環境を指す。ハードウェアベンダは自社製のハードウェアに最適なソフトウェア環境を構築することに主眼を置くことで、アウトソーシングサービスがハードウェア依存のビジネス体質を抜け出す1つの解答として存在する、という背景もあるだろう。

 一方で、CAのようなアプリケーションベンダがアウトソーシングサービスに乗り出すのは容易ではない。マイクロソフトが自律型コンピューティング戦略を展開するにも、パートナーとしてのハードウェアベンダの存在は不可欠だが、その際、IBMやHPは逆に強力なライバルとなる可能性がある。CAが推進するオンデマンド・コンピューティングの中核要素には「管理」という概念が大きな座を占める。これは、Unicenterに代表されるシステムマネジメント製品が、同社の競争力を維持するうえで最も大きな意味を持つという背景から当然の帰結だろう。

 クマー氏はCAが考えるオンデマンドの4つのカギとして(1)ダイナミック・プロビジョニング、(2)コンソリデーション、(3)インテグレーション、(4)自動化を挙げながら、特定のハードウェアに依存せず、なおかつ特定のミドルウェアにも依存しない柔軟性を維持しつつ、顧客の望む(オンデマンドな)システムのあり方を提案するのが、CAの方向性だと話す。Webサービスやセキュリティ、Linux対応、ストレージの仮想化などの技術は、いずれもオープンスタンダードに準拠したものであり、同社にとっては、メインフレームに依存せざるを得なかったかつての時代を脱却するチャンスが今、巡ってきたと言えるかもしれない。

Linux、世界を支配するシステムへ

CAの上級副社長 Linux技術グループ サム・グリーンブラット氏

 caworldは、オープニング日の13日18時に行われた会長兼CEO サンジェイ・クマー氏の基調講演で本格的に幕を開けたわけだが、実際には朝からいくつかのテクノロジ・トレンド・セッションが行われており、世界各地から取材に訪れたプレス関係者やビジネスパートナーが熱心に耳を傾けていた。

 上級副社長 Linux技術グループ サム・グリーンブラット(Samuel J Greenblatt)氏が行った「The Impact of Linux」は、米国におけるLinuxを取り巻くトレンドとCAの取り組みを解説したセッション。グリーン・ブラッド氏は5月に来日し、@ITのインタビューを受けている(「[Interview] 「オープンソースは大好き」、CAにLinux戦略を聞く 」)。インタビューで同氏は、CAの強みを「ハードウェアへの非依存」「サービス会社を持たないこと」「どんなOSにも対応できるソフトウェアの技術力があること」の3点を挙げていた。これらの強みはLinux対応のビジネスを展開していくうえで重要な要素であり、逆にいえばCAにとってLinuxとは、技術の変遷が激しいIT業界を生き残るうえでの命綱の1つのようなものかもしれない。

 グリーンブラッド氏が語るCAのLinux戦略は、(1)eビジネスのインフラとして推進していくこと、(2)オープンソース運動の推進に参加することで、オープン技術の進化に貢献、技術力の強化を図ること、などが挙げられる。このようなLinux戦略に限らず、同社の全体的な戦略が、Linuxを代表とするオープンソース活動と連動するようになってきており、かつてIBMのS/390をはじめとしたメインフレームを主要プラットフォームとしてアプリケーションビジネスを展開してきたCAとは隔世の感がある。ラインアップが300を超える同社のアプリケーションが着実に生き残っていくためには、時代の流れに乗るプラットフォームを正確に予測し、対応していく必要がある。同社のようなエンタープライズ規模の大企業が主要顧客であるアプリケーションベンダの場合は、特にその傾向が顕著だろう。

 グリーンブラット氏はLinuxの今後の課題として、「拡張性」「信頼性」「セキュリティ」「管理性能」「柔軟性」「コスト」といったまさにエンタープライズプラットフォームが備えるべき要素の技術的進歩が重要と話し、ウォールストリートの金融業界、通信、サイエンス分野、政府といった巨大市場の基幹システムを担うシステムへと成長を続けていくと予測している。

(編集局 谷古宇浩司)

[関連リンク]
コンピュータ・アソシエイツ
ca world 2003

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