米Netliの“秘密技術”が遠距離アクセスの問題を解決する

2003/8/9

 独自プロトコルを使って高速なWebアクセスを実現するサービスを開発した米NetliのVice President Channel Salesのスコット・ブレントン(Scot Brenton)氏は、Netliのサービスを国内で提供するIIJが主催した説明会で講演し、「これまで遠距離からアクセスするWebアプリケーションは、1秒以下のレスポンスは無理とされていたが、Netliの技術を活用すれば可能だ」と述べ、自社の技術をアピールした。

米NetliのVice President Channel Salesのスコット・ブレントン氏

 IIJが提供開始したのは「IIJ ネットライトニング」。Netliが海外で提供しているサービス「NetLightning」を国内向けに提供するサービスで、国外から国内のWebサーバにアクセスする際のレスポンスタイムを改善できるという。特に処理が遅くなりがちなWebアプリケーションを利用する際に有効としている。

 ブレントン氏によると、Netliは米スタンフォード大出身の2人のロシア人とモスクワ大出身のロシア人が2000年にシリコンバレーで設立。今春からサービスを提供している。

 NetLightningの特徴は既存のWebサーバやクライアント、ネットワークに対して大きな変更を加えることなく利用できる点だ。アクセスを受けるWebサーバのDNS設定を変更するだけで、Webサーバへのアクセスが独自の高速プロトコル「Netli Protocol」に導かれ、応答速度が改善する。アクセスを代替するキャッシュサーバと異なり、ダイナミックにコンテンツが変化するWebアプリケーションでも利用可能。ブレントン氏は「Webサイトにもインターネットにもダメージを与えることなく、高いパフォーマンスを実現できる」と述べた。

 Netliのサービスは、すでにヒューレット・パッカード(HP)などが導入している。HPは世界の数千のエンジニアに対して、米国のデータセンターにアクセスし、必要なドキュメントやソースコードをダウンロードしたり、コミュニティを利用できるサービスを提供している。しかし、欧米から米国のデータセンターにアクセスすると5秒、アジアからだと9秒というようにレスポンスに時間がかかっていた。NetLightning導入後は、そのレスポンスが世界のどの地域からアクセスしても1秒以下に改善。HPはWebサーバやネットワークへの追加投資を行う必要がなくなり、数十万ドルを削減できたという。

 また、バイオサイエンス企業の米ミリポアは、海外顧客やパートナー向けのeコマースサイトにNetLightningを導入した。データベースに「Oracle 8i」、Webアプリケーションサーバに「WebSphere」、グループウェアに「Lotus Domino」などを利用したシステムだったが、以前は海外からアクセスした場合のレスポンス性能が低く、顧客やパートナー、社員などから不満が出ていたという。東京からeコマースサイトにアクセスした場合の平均レスポンス時間は、7.5秒だった。NetLightning導入後は、レスポンス時間は2秒以下に改善。ロンドン、サンフランシスコからのダウンロード時間も50%以上改善したという。

 NetLightningはWebアプリケーションの課題を解決するサービスとして、国内でもグローバル企業を中心に引き合いがあるだろう。ただ、疑問点はNetli Protocolがどのような仕組みになっているかということ。IIJはサービスの発表時に、「Webサイトを表示する場合、通常は数10回のデータのやりとりが必要になるが、Netli Protocolはこのデータのやりとりを数回に減少させる機能がある。長距離のデータ交換回数を少なくすることで、Webサーバの応答速度を向上させる」などと説明したが、今回のブレントン氏の説明でもこれ以上の説明はなかった。Netliが特許申請しているため、詳細な情報は明らかにできないというのが理由で、IIJも詳細な技術情報は知らされていないという。それだけ画期的な技術ということかもしれないが、サービスの利用を検討する顧客側とすれば、もう少し詳しいことを聞きたいと思うのではないだろうか。

(垣内郁栄)

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米Netli
IIJの発表資料

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