世界初、管理者が自由に経路制御できる「波長VPN」

2003/10/9

 日本テレコムは、GMPLS技術を利用した「波長VPNサービス」のプロトタイプ開発に世界で初めて成功したと発表した。

 IP-VPNサービスの次世代技術として日本テレコムがプロトタイプを開発した波長VPNサービスは、光ネットワーク上の信号伝達技術であるGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)が鍵を握る。GMPLSは今日のVPNサービスのベースとなっている回線制御方式であるMPLSの次世代技術として、IETFが標準化を進めている。
 

日本テレコム 戦略企画本部情報通信研究所 次世代網システム部 部長 笠史郎氏

 日本テレコムが発表した波長VPNサービスは、光の波長をメッシュ型に相互接続させることでVPNを構成する。接続部分となる伝送装置には、全光型光クロスコネクト(Photonic Cross Connect:光スイッチによる交換機)を用いて、電気処理をせずに光データをそのまま伝送する。波長VPNサービスに、GMPLSと全光型光クロスコネクトを用いることでユーザー企業は、接続拠点の再構築を自由に行え、広帯域な自社専用のVPN網が利用できることになる。
 
 日本テレコム 戦略企画本部情報通信研究所 次世代網システム部 部長 笠史郎氏は波長VPNサービスの特徴として以下を挙げた。

  • ユーザー企業は光波長の有するビットレート帯域を自由に使える
  • ユーザー企業側がWebブラウザを用いて、接続拠点構成を自由に設定、変更、削除でき、VPNの再構成を柔軟に行える
  • データを光信号のままデータのルーティングするため、伝送遅延の問題は解決される
  • IPベースのネットワークでは1本のトラフィックに異なるユーザートラフィックが行き交うことがあるが、波長VPNサービスはユーザー企業のVPN専用線となるため、安全性が高い

 波長VPNサービスの利用先について笠氏は、高速、低遅延、高セキュリティが求められる金融業界などの企業内情報通信や、即座にVPNを再構築できるメリットを生かし、エクストラネットなどの企業間を挙げた。また、グリッドコンピューティングなど大容量、高速ネットワークが必要とされるシステムにもニーズがあると想定する。
 
 サービスの開始時期について、笠氏は「GMPLS技術を実装した機器がベンダから出荷されるのを待ち、サービスを開始することになる」と語った。日本テレコムは、10月12日からスイス・ジュネーブで開催されるITU Telecom World 2003で企業の拠点に見立てたノードを設置して、波長VPNサービスのデモを行う予定だ。

 笠氏は「国際電機通信連合(ITU-T)では、波長VPNサービスと同等のサービス要件の標準化を、『レイヤ1VPNアーキテクチャ』として議論を進めている。2拠点間のシングルコネクションがタイプ1、3拠点以上での複数コネクションをタイプ2に位置付けている」と説明。「日本テレコムではタイプ1に相当するプロトタイプ開発は今年3月にすでに成功し、タイプ2に相当するアーキテクチャのプロトタイプ開発にも、これで成功したことになる」と語り、標準化団体に先んじる日本テレコムの技術力の高さをアピールした。

(編集局 富嶋典子)

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日本テレコムの発表資料

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