知的財産を原則オープンに、マイクロソフトの思惑は何か

2003/12/5

 マイクロソフトは、特許などの知的財産をほかのベンダに対して原則的にオープンにする方針を発表した。これまでは知的財産の使用を申し出た企業と個別に交渉し、特許使用の可否やライセンス料を決めていたが、今後は対象となる知的財産や対象企業の範囲を広げ、利用条件を明確にする。マイクロソフトが持つ知的財産がほかのベンダに利用されることで、同社の技術がIT業界に広く普及することや、他社とのパートナーシップを強化する狙いがある。

 マイクロソフトはライセンス適用の第1弾としてフォント表示技術の「ClearType」とファイル管理フォーマットの「FATファイル システム」を有償ライセンスで提供すると発表した。Agfa MonotypeやLexar Mediaが使用許諾を受け、有償ライセンスで利用することを表明している。マイクロソフトはほかの知的財産についても順次開放していく方針で、マイクロソフトアジアリミテッドの法務・政策企画統括本部 統括本部長で弁護士の平野高志氏は、「すべての知的財産についてオープンの方向で動いている」と述べた。

 非商用で学術機関が知的財産を利用するケースや、エンジニアがWindowsのSDKプログラムの下で知的財産を使うケースは無償ライセンスで利用できる。今後はその対象となる知的財産を拡充する方針。Webサービス関連の特許についても無償ライセンスを受けやすいようにする。

マイクロソフトアジアリミテッド 法務本部 極東地域担当 アソシエイト ジェネラル カウンセル トム・ロバートソン氏

 マイクロソフトアジアリミテッド 法務本部 極東地域担当 アソシエイト ジェネラル カウンセル トム・ロバートソン(Tom Robertson)氏は、ライセンスプログラムを拡大する理由を「IT業界からの要望が多かった」と説明。知的財産の公開で「製品の多様さや品質の向上につながりIT業界が発展する」と述べた。マイクロソフト自身にとっても「他社との協業やパートナーシップが強化されることを期待している」という。知的財産を広範に公開しているIBMや富士通などがモデルになるという。

 ただ、マイクロソフトは知的財産のライセンス料で会社の売り上げを伸ばすことは考えていない。自社の知的財産を広く開放することで、IT業界で存在感を増しているオープンソースソフトをけん制する狙いを指摘する声もあるが、知的財産を相互利用するクロスライセンス契約の拡大などで間接的にメリットを得るのが、本当の狙いと考えられる。マイクロソフトによると、同社とほかのベンダとのクロスライセンス契約は「最近、10件に届いた程度」で、マイクロソフトが自社の知的財産を他社に公開していること自体が知られていない状況。「ほかの会社もやっている」(ロバートソン氏)知的財産の公開で、同社の技術を活用したソフト開発を促し、業界全体への影響力を高めたいという思惑があるようだ。

(編集局 垣内郁栄)

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マイクロソフトの発表資料

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