2004年のIT投資で泣くベンダ、笑うベンダ

2004/1/20

 IDC Japanは2004年の国内IT投資規模が12兆1767億円で、対前年比2.2%の成長になるとの予測を発表した。プラス成長は4年ぶり。IDC Japanのリサーチバイスプレジデント/シニアITアナリスト 佐伯純一氏は、IT投資回復の要因として「経済環境の好転と、2000年問題以後の買い控えから買い替えの時期を向かえた」ことを挙げた。

IDC Japan リサーチバイスプレジデント/シニアITアナリスト 佐伯純一氏

 IDC Japanによると2003年のIT投資は、企業が投資効果を見直したことなどから3年連続のマイナス成長となった。一方、2004年は主に企業業績の回復などから投資が膨らむため、2.2%成長になると予測。2002年から2007年までの年平均成長率は1.5%になるとみている。

 佐伯氏が「2004年に高い成長が期待できる」と指摘したのが、IP-VPN、インターネットVPN関連のサービス。既存のデータとIP電話など音声を組み合わせたサービスが広がり、安価にセキュアな通信ができるIP-VPN、インターネットVPNの需要が拡大すると予測。通信キャリアが電話の機能を企業に提供するIPセントレックスも2004年に大きく成長するとみている。2003年のIP-VPN、インターネットVPNの市場規模はそれぞれ1100億円と200億円。2007年までの年平均成長率は19.3%と30.5%で、2007年にはIP-VPN、インターネットVPNを合わせて2500億円以上の規模になると予測している。

 サーバ関連ではx86サーバが2003年に続き、2004年もプラス成長になると予測。一方、UNIXなどのRISCサーバ、メインフレームの2004年予測は「2003年と同程度の減少」。特にRISCサーバは「2007年まではマイナスにならないと予測されていたが、マイナスになる時期が早まっている。当初の予測以上に市場を縮小している」と佐伯氏は指摘。RISCサーバの市場縮小は主にハイエンドサーバで顕著といい、「RISCサーバの市場縮小を補うようにハイエンドサーバ市場でx86サーバが伸びている」という。

 ストレージはGB当たりの価格下落が2004年も続く。価格の下落幅は年30%を超える予測で、「ユーザーの利用が増えない限りマイナス成長になる可能性がある」と指摘した。

 ソフトはERPなどエンタープライズアプリケーションの導入が主な企業で一巡し、成長が鈍化すると予測。対して、複雑化したシステムの問題を解決するための管理ツールは成長が予測され、IDC Japanは「システム/ネットワーク管理、ストレージ管理、セキュリティ管理など、システムのインフラを管理するソフトウェアの市場が成長する」とみている。サービス分野では、ハード、ソフトの保守、サポートの成長が価格低下によって鈍化するものの「データセンターやASPサービスなどのアウトソーシングで拡大傾向」(佐伯氏)がみられるという。ネットワークのマネージドサービスなども注目を集める。

 2003年、2004年のIT投資状況を見ると、ハード、ソフト、サービスの各分野で価格低下が続いていることが分かる。佐伯氏はこの流れを「ベンダ間で大きな競争が行われていて、ベンダが主導し、ユーザーに対して価格を提示できない状況」と説明した。ただ、逆にみると「ユーザーがベンダに対して主導権を持つ環境」(佐伯氏)が出来上がっているということ。佐伯氏は「ベンダのビジネス機会は、ユーザー企業と協力して最適な投資を追求することにある」と述べ、ベンダが今以上にユーザーサイドに立った提案を行う必要があるとの認識を示した。

(編集局 垣内郁栄)

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