「井の中の蛙」、新日鉄ソリューションズ会長が国内SIerに喝!

2004/1/22

 「国内のシステム・インテグレータ(SIer)は保護されたマーケットでぬくぬく楽しくやってきた。日本のシステム・インテグレーションの国際競争力は相当に劣後した状態ではないか」。新日鉄ソリューションズの代表取締役会長 棚橋康郎氏は、情報処理推進機構(IPA)が開催したイベント「IPAX Winter2004」のパネルディスカッションでこう述べて、国内SIerの現状を痛烈に批判した。

 パネルディスカッションは「ソフトウェアの国際競争力の強化に向けて」のテーマで、棚橋氏のほかにコーエー 代表取締役会長 襟川恵子氏、NTTソフトウェア 取締役相談役 鶴保征城氏、ラック 代表取締役社長 三輪信雄氏が参加した。コーディネータは電気通信大学電気通信学部情報工学科 教授 竹内郁雄氏が務めた。

新日鉄ソリューションズ 代表取締役会長 棚橋康郎氏

 棚橋氏は自社の事業であるシステム・インテグレーションについて、「日本語のバリアに守られた状態で、寛容なユーザーを相手に下請けの単価を叩いて収益をあげている」と指摘。「大きなユーザーにコバンザメのように付いて受注を得ている」と批判した。SIerが顧客企業に本来提供すべき、問題解決能力、質の高いシステム・エンジニアリング能力で競争していないという批判だ。いわば「井の中の蛙」(棚橋氏)状態で、「日本の情報サービス産業は近代工業のレベルになっていない。家内工業だ」という。

 NTTソフトウェアの鶴保氏は、「基本的には棚橋氏の意見に同意する」としたうえで、「ソフト開発で設計と製造の分離がうまくいっていない」と指摘。「いつまでも人海戦術でソフト、システムを開発していては無理がある」としてオブジェクト指向開発など効率的な開発手法の導入が重要との認識を示した。ただ、オブジェクト指向開発で作業が効率的になると、「SIerは楽になるが、日本の雇用は確実に減る。ごちゃごちゃ開発しているほうが雇用は守れるというジレンマがある」と述べた。

 コーエーの襟川氏は中古ゲームソフトの普及で国内ゲーム産業が縮小していること。ラック 三輪氏はセキュリティを考慮したシステム開発の難しさを指摘した。

 棚橋氏の批判はSIerだけでなく、ハード、ソフトベンダ、ユーザー企業にも及んだ。ベンダについては「ハード、ソフト、ミドルウェアとほどんどは舶来製。この20年、日本のベンダがやってきたことを極論すれば、太平洋越しに双眼鏡でシリコンバレーやシアトルを見て、筋がよさそうなものがあれば他社より一瞬でも早くつばを付ける、クローンを早く作ってマーケットに出す。こんなことを唯一の差別化として繰り返してきたのではないか」と述べ、国内ベンダの姿勢を批判。「私の目には国内のプロダクツ産業は中身のない、薄っぺらな産業に見える」と述べた。

 一方、ユーザー企業について棚橋氏は「何のためにシステムを作るのか不明確な企業が多い。中央官庁がその典型だがRFP(Request For Proposal)も書けない」として、「ベンダに囲い込まれないために、適切な判断能力を持つことが重要だ」と訴えた。

 では、SIerやベンダの現状に対して棚橋氏はどのような解決策を提示したのか。棚橋氏が訴えたのは「人をどう育てるか」と「工学的システム構築の開発と普及」だ。この2つは別々に行う施策ではなく、統合的に行われて初めて真価を発揮する。各企業はエンジニアに対する教育投資を積極的に行い、「何でも屋から高級ブティック専門店」へ転換することが必要という考え。また、標準的なシステム構築手法の採用で、属人的なシステム開発に陥ることを防ぎ、「品質保証体制」を強化することも重要という。

 一方、国際競争力を向上させるには国のバックアップも必要というのが棚橋氏の認識。特にIPAが開設した「ソフトウェア・エンジニアリング・センター」と「情報処理技術者試験」、経済産業省が策定した「ITスキル・スタンダード」については、「日本のソフト開発を家内工業から近代工業に転換させる重要な施策」と高く評価。「この3点セットは、日本のソフトエンジニアリングの力を上げていくには極めて適切だ」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
情報処理推進機構(IPA)

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