「業界のルールを変える」、サンの64ビット・コンピューティング戦略

2004/2/17

米サン・マイクロシステムズ エンタープライズ・システム・プロダクトのマーケティング担当バイス・プレジデント スティーブ・キャンベル氏

 サン・マイクロシステムズは2月16日、AMDとの提携後初の製品であるOpteron搭載エントリサーバ「Sun Fire V20z」とチップ・マルチスレッディング(CMT)技術を実装したUltraSPARC IV搭載サーバ「Sun Fire エンタープライズサーバ」を発表した。これにより、ローエンド、ハイエンドの両側面から同社の次世代チップ戦略に基づく製品が出荷されることになる。

 ローエンド市場からみた場合、同社はAMDと提携することで、IA-32サーバの置き換え需要を狙うことになる。米サン・マイクロシステムズ エンタープライズ・システム・プロダクトのマーケティング担当バイス・プレジデント スティーブ・キャンベル(Steve Campbell)氏によると、サンがインテルではなく、AMDとあえて提携関係を結んだのは「64ビットプロセッサの開発に成功していたのはインテルではなく、AMDであり、スペックを比較しても、AMD製品の方が格段に優れていた」からだという。

 先ごろ米国で同社は、次世代サーバ技術を開発しているKealiaを買収したと発表している。KealiaはOpteron搭載サーバ開発において有力な企業であり、また(Kealiaの)創業者であるAndy Bechtolsheim氏はサンの創業者の1人でもあることから、サンとAMDの提携による影響は、32ビットのIAサーバが少なからずシェアを持つ市場に対して、無視できない影響を及ぼすものと考えられる。「IT業界のルールそのものを変えるのがサンのやり方だ。これまでもそうだったし、これからもそうあり続ける」とキャンベル氏は胸を張って断言する。

 一方、ハイエンド分野では、CMT技術の実装が核となるUltraSPARCが、同社の未来を担う。CMTとは、対称型マルチプロセッシング(SMP)処理を1個のプロセッサ上で実行するように開発された技術で、1プロセッサ当たり同時に「数十のスレッドを実行することが可能になる」(同社)。現段階のUltraSPARC IVは1プロセッサあたり2つのスレッドを同時に処理可能な設計であることにとどまっているが、コードネーム「Niagara」といわれるUltraSPARC IVの次期バージョンでは32のスレッドが同時に処理可能となるという(実際には4つのスレッドを扱えるチップコアを8つ使用する仕組みである)。2005〜2006年頃の登場が予定されており、その次にはUltraSPARC Vが控えている。このCMT技術は、ローエンド市場向け製品にも適用される計画で、キャンベル氏は「これが導入されれば、IT市場を再定義するほどの大きな影響を与えることになる」と話す。

 サンに限らず、IBM、HPなどの主要サーバベンダが狙っているのは、ハイエンド分野ならメインフレームからの置き換え、ローエンドからミッドレンジ分野ならx86系IA-32プラットフォームの64ビット・コンピューティング環境への置き換えである。サンは両分野に対して、まずはハードウェア(チップ)面における優位性を訴えかける戦略を採用し、実行に移している真っ最中である。64ビット・コンピューティング環境を巡るプラットフォームのシェア争いはいまはじまったばかりだ。

(編集局 谷古宇浩司)

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