「Do you have a HONDA?」を目指すアドビCEO

2004/3/9

 米アドビ・システムズ 社長兼CEO ブルース・チゼン(Bruce Chizen)氏は同社の2003年度決算について、「業界全体が低成長の中、大きな成長を達成できた」としたうえで、「今後はインテリジェント・ドキュメント・ソリューションにかなりの力を注いでいく」と述べ、PDFをプラットフォームにしたエンタープライズ向けビジネスの拡大を目指す考えを強調した。

米アドビ・システムズ 社長兼CEO ブルース・チゼン氏

 チゼン氏によると同社の2003年度の売り上げの比率は「3分の1がクリエイティブ・プロ向 け、3分の1がコンシューマ向けソフト、そして3分の1がエンタープライズ向けのドキュメント・ソリューション」。イメージ関連のソフトはアドビが創立時から手がけてきた分野で、今後の大きな成長は難しい。一方、ドキュメント・ソリューションは2002年のアクセリオ買収をきっかけに本格化させた事業で、今後の成長が望まれる。

 アドビではPDFを単なるドキュメントフォーマットではなく、ビジネスの標準プラットフォームとして打ち出そうとしている。目指すのは「ERPのSAP R/3、データベースのOracle、OSのWindows、プロセッサのPentiumなどのような業界標準プラットフォーム」(チゼン氏)だ。業界標準プラットフォームとは「顧客、パートナーがそのうえで付加価値を提供できる」という存在。アドビはPDFを業界標準プラットフォームにすべく、パートナー戦略を積極的に展開。IBM、SAPとグローバルパートナー契約を結び、お互いの製品を組み合わせたソリューションを開発している。

 一方、PDFを他社のアプリケーションと連携させるには「単にドキュメントを保存するだけのスタティックな機能では不十分」として、チゼン氏はメタデータを扱えるように、最新版のPDF(Acrobat 6.0)ではXMLへの対応を強化したことを強調した。XMLに対応したことでドキュメントという単位を飛び越えて別のアプリケーションがPDFから必要なデータだけを抽出したり、逆にアプリケーションがPDFにデータを登録することを容易にした。ドキュメントとしてだけでなく、アプリケーション連携を強化したことで「プレゼンテーション、インタラクションのプラットフォームとしてPDFが使われ始めている」(チゼン氏)という。

 チゼン氏はアドビを自動車、二輪車メーカーの本田技研工業に例えて、「ホンダは芝刈り機の製造から二輪車、自動車、小型ジェット機と業務を拡大してきた。ホンダの一貫する強みはエンジンを作り、優れた製造工程を作るコアの能力だ」と指摘。「アドビのコアの能力、スキルはあらゆる人々のコミュニケーションをよくすること」と述べて、ソフトウェアの分野で対象分野を拡大するアドビの姿勢を説明した。

(編集局 垣内郁栄)

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