LinuxとWindowsのTCOを「勝手に計算」

2004/4/24

 テンアートニ 代表取締役社長 喜多伸夫氏は企業で進むオープンソースソフトウェア(OSS)の導入について、「OSSを選択するうえでの最大の関心はライセンス・ロイヤリティの少なさだと思う。しかし、商用ソフトと比較してTCOを削減するには運用管理コストを下げられるかが重要になる」と述べ、OSSエンジニアの育成などユーザー企業内での取り組みが鍵になるとの考えを示した。

テンアートニ 代表取締役社長 喜多伸夫氏

 喜多氏は@IT情報マネジメントが4月23日に開催したイベント「企業情報マネージャーのためのオープンソース導入セミナー」で講演した。

 喜多氏はマイクロソフトが対LinuxキャンペーンとしてWebサイト上で展開している「Get The Facts」内の調査結果を紹介した。紹介したのはGiga Researchが行ったWindowsプラットフォームとLinux/J2EEプラットフォームによるアプリケーションの開発と展開についてのコスト比較。調査は同じモデルのIAサーバを利用。Windowsプラットフォームでは、OSにWindows Server 2003、データベースにSQL Server、開発ツールにVisual Studio .NET 2003、ソフトのメンテナンスにSQL ServerとVisual Studioを使う。この構成でソフトを開発し、3年間のサポートを行った場合のTCOは164万3112ドルになるとGiga Researchでは示している。

 対して、Linux/J2EEプラットフォームは、OSにRed Hat Enterprise Linux、WebアプリケーションサーバにBea WebLogic、データベースにOracle、開発ツールにBEA dev2dev Subscription Tools Editionを利用する。ソフトのメンテナンスは、WebLogicとOracleを利用することになっている。この構成でのTCOは228万9041ドルで、Giga Researchでは「大規模なソフト開発、運用では、WindowsプラットフォームはLinux/J2EEと比較してトータルコストを28.2%低くできる」と結論付けている。

 しかし、システム構成を見て分かるとおりLinux/J2EEプラットフォームはOSにLinuxを使っているだけで、そのほかはすべて商用ソフトだ。そこで喜多氏は「勝手にOSSだけで計算してみた」。ハード、OSは同じでWebアプリケーションサーバにJBossかTomcatを利用、データベースはPostgreSQLかMySQLを使う。開発ツールはEclipse、NetBeansを利用する。この場合のTCOは191万9674ドル。無償または低価格で利用できるOSSを全面的に採用してもWindowsプラットフォームの164万3112ドルと比較して高額になってしまうのだ。この価格差は、システムの運用管理コストが要因。Giga Researchでは、Windowsプラットフォームの開発チームの人件費、システム管理費、トレーニング費などの総計を143万3000ドルと計算。一方、Linux/J2EEの運用管理コストは186万4000ドルとしていて、Windowsと比較して高コストになるとしている。

 喜多氏の計算からは、Windows、Linux/J2EEとも運用管理コストを下げることが全体のTCO削減につながることが分かる。喜多氏はOSSの運用管理コストは「やってみないと分からないところがある」と指摘。導入する企業やシステム・インテグレータ、利用するツールの事情など「多くの選択肢が存在する」からだ。ユーザー企業自らがOSSのエンジニアを育成し、メンテナンスのコストを節約することもできる。

 一方、商用ソフトの運用管理は「単一企業に依存するということ」(喜多氏)で、ベンダの都合でコストが突然跳ね上がることも否定できない。

 喜多氏はOSSがビジネス利用を前提にコミュニティで開発されているわけではないこと、事前の稼働検証が不可欠であることなどを指摘したうえで、「OSSと商用ソフトのコスト比較は単純にはできない。アプリケーションに合わせて使い分けるのがポイントだが、ユーザー企業は常に選択肢を持つことが重要だ」とまとめた。

(編集局 垣内郁栄)

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テンアートニ
マイクロソフト「Get The Facts」

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