XMLエバンジェリストが予測、「SOAがシステム統合を解決」

2004/5/18

 企業のシステムを構築する新しいアーキテクチャとして登場した「サービス指向アーキテクチャ」(Service Oriented Architecture:SOA)。SOAは、ビジネスの素早い変化に対してITが対応していくためのアーキテクチャとして最近注目を集めている。5月17日にXMLコンソーシアムが開催した「第3回XMLコンソーシアムWeek」の第1日目の特別講演で、XMLコンソーシアム エバンジェリストで、日本IBM ソフトウェア事業 テクノロジー・エバンジェリストの米持幸寿氏が、SOAによって実現されるITの将来像について解説した。

XMLコンソーシアム エバンジェリスト 米持幸寿氏

 米持氏は、いままでのシステム統合はエンドユーザーにとってコストのかかる事業であり、しかも複数のベンダからなるシステムを統合するのはインターフェイスの互換性や機能差などの問題で難しかったと指摘。これがビジネスの変化に対応した企業システム構築の障害となっており、それを解決する手段として注目されているのがSOAだ、とした。

 SOAでは、すべてのソフトウェアを「サービス」として組み立てて統合する。このことが、それまでのアーキテクチャとの最大の違いだ。米持氏はSOAにおけるサービスの定義として、独立して稼働するモジュールで、公開された方式で呼び出し可能、記述可能なインターフェイス、発見メカニズムを持つ、などの特徴を挙げた。

 これらの条件を満たすのがXML、SOAP、WSDLといったWebサービスの技術であり「Web技術でSOA型のサービスを実装したのがWebサービス」(米持氏)だ。一方で、CORBAやEJBも同氏が挙げたサービスの条件に合致するが、実際には「相互運用性に制限があるため、実用上はそこが問題になるだろう」と、Webサービス技術がSOAを構築する最有力とした。

 SOAでは、部品として用意されたサービスを組み合わせてビジネスのプロセスを構築していく。複数のサービスを連携させてビジネスを遂行していくためには、「ビジネスの実行モデルを定義し、そのモデルを記述する言語が重要」(米持氏)となる。今後はそうしたビジネスプロセスをマネジメントする技術の開発に注目が集まる。現在、ビジネスプロセスマネジメントを記述する言語には、BPMN/BPML(BPMI)やUML(OMG)BPEL4WS(OASIS)などが標準の有力候補として存在しており(カッコ内は標準化団体)、今後さらなる進化と標準化が進められる予定だ。

 SOA型のシステムでは標準技術によってサービス同士を柔軟に接続できるため、さまざまなサービスをメッシュのような形に統合していくこともできる。しかし、これを無計画に実装していくと全体がスパゲッティのようにこんがらがってしまう。米持氏は、こうした問題を解決するために、サービスの統合ポイントを一カ所に登録してアクセスできるようにするエンタープライズ・サービス・バス(ESB)というコンセプトが出てきていることを紹介した。

 ESBを採用すると、バスにアクセスするだけで、すべてのサービスへのアクセスが抽象化されていて呼び出せる。米持氏は、将来はさまざまな製品にESBが備わり、さらにそうした製品ごとのESBを統合することで全体を統合する、といった製品も登場するだろうと、SOAに対応した製品の将来像を予測した。

(編集局 新野淳一)

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