パートナーを魅了する富士通に、中堅企業向け新戦略を発表

2004/6/15

富士通 経営執行役 マーケティング本部長 兼 中堅市場ビジネス本部長 長野佳久氏

 富士通はIT基盤「TRIOLE」の適用、新パートナープログラムの導入などを柱とする中堅企業向けビジネスの新戦略を6月14日に発表した。富士通 経営執行役 マーケティング本部長 兼 中堅市場ビジネス本部長 長野佳久氏は「オフコン時代は強いプラットフォームを提示し、パートナーの富士通へのロイヤルティ(忠誠心)は高かった。しかし、オープン時代ではパートナーは富士通だけにロイヤルティを持たなくてもよくなっている」と現状を分析。TRIOLEの適用や新パートナープログラムで、中堅企業戦略の中心となるパートナーの協力を引き出す考えを強調した。

 富士通は中堅企業市場で2002年度のシェア14%を、2006年度に20%に引き上げることを目指す。売り上げは2002年度の2200億円を3200億円まで伸ばす。

 中堅企業向け新戦略の中心は「Piテンプレート」の開発と、新パートナープログラム「パートナーアリーナ」の導入だ。PiテンプレートとはTRIOLEに基づき、富士通のミドルウェア、サーバ、ストレージなどを組み合わせて事前検証したソリューション・パッケージ。これまでの大企業向けのPiテンプレートは富士通製品が中心だったが、中堅企業向けにパートナーのパッケージソフトを含めたPiテンプレートを開発する。複数のISVの製品を組み込んだPiテンプレートも開発。必要なシステムを事前に構築、相互運用性を検証できるため、システム・インテグレータ(SIer)のパートナーは短期間で高品質なシステムを構築できるという。富士通がすでに手がけている事例では、従来方法と比較して開発期間を30%短縮したという。

 富士通はPiテンプレートでシステムを構築するSIer向けに「統合インストールツール」を導入する。SIerはサーバのIPアドレスやデータベースのライセンス数など顧客システムの情報を「導入パラメータシート」に記入。統合インストールツールがこの導入パラメータシートを読み込んで、自動でPiテンプレートを開発する。手動での開発と比較してミスが少なく、手戻りが少ないシステム構築が可能だという。

 新パートナープログラムのパートナーアリーナでは、技術支援が中心となる。富士通は、パートナーのISVやSIerが自社の製品と富士通製品との相互接続性をチェックし、Piテンプレートの開発につなげることができる「Piセンター新宿」を開設した。富士通のIAサーバやストレージなど200台以上を利用できる。また、富士通はマイクロソフトと連携し、.NET環境でパッケージソフトを開発するISVを支援する。技術的なアドバイスやコンサルティング、教育、トレーニングなどがその内容。富士通はレッドハットと協力し、「Red Hat Enterprise Linux」対応製品を開発するISVに対しても同様の支援を行う。富士通はパートナーへの支援の拠点として情報提供や共同プロモーションを行う100人規模の「パートナーアリーナセンター」を東京・汐留の本社に開設した。

 パートナーアリーナにはISVを中心に11社が参加を表明。サイボウズやディサークルは自社パッケージ製品を組み込んだPiテンプレートをすでに開発済み。OBC、ピーシーエーも開発予定という。今回の中堅企業戦略の強化はシステム開発が主な対象だが、富士通はパートナーアリーナを2004年度下期にも拡大し、システムの保守・運用業務についてもパートナーを支援するとしている。

(編集局 垣内郁栄)

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富士通の発表資料

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