「すごさを知って」、IBMが早大でメインフレームセミナー

2004/6/22

 世界最初のメインフレーム・コンピュータであるIBMの「System/360」(S/360)が誕生して40周年。日本IBMはメインフレームの歴史や技術を紹介するセミナーを6月21日に早稲田大学理工学部で開催した。日本IBMの開発製造 ソフトウェアセンター 副部長 下山達也氏は「メインフレームのすごさを知ってもらいたい」と述べた。

 S/360が登場したのは1964年4月7日。当時のIBMの売り上げの1.5倍以上になる50億ドルを投じて開発した。S/360が革新的だったのは、ハードウェアとOSのOS/360の仕様を公開し、業務アプリケーションの開発を促したことだ。S/360の仕様に合わせて開発されたアプリケーションなら、S/360の別シリーズや、後継のメインフレームでも稼働することを保証した。1つの業務しかできない“専用機”のコンピュータに対して、メインフレームはアプリケーションを組み替えることでさまざまな用途に使うことができることから“汎用機”と呼ばれている。下山氏は「S/360は技術計算と事務計算という2種類のコンピュータを統一した」と特徴を説明した。

 S/360のもう1つの特徴はプロセッサとメモリの処理に割り込みの概念を導入したことだ。非同期でプロセスを処理できるようになり、「たくさんのプログラムを同時に動かすことができるようになった」という。いまのメインフレームでも使われているバッチ処理やオンライン処理が生まれたのもS/360の時代だ。S/360は当時の世界記録となる3万3000台を出荷。日本では1965年、東海銀行(現UFJ銀行)が初めて導入した。

日本IBMの先進テクニカルサポート シニア・コンサルティング ITスペシャリスト 榊幹雄氏

 メインフレームの今後をIBMはどう考えているのか。日本IBMの先進テクニカルサポート シニア・コンサルティング ITスペシャリスト 榊幹雄氏は「IBMはメインフレームのzSeriesと、UNIXサーバのpSeries、オフコンのiSeriesを共通テクノロジで開発し、低コスト、低価格を実現する」と述べた。3種のサーバは筐体や電源を共通化。「3本の矢は折れない。フォーメーションを組んで新しいサーバを作る」という。

 IBMはメインフレームの技術を積極的にUNIXサーバに移植する方針だ。IBMの最新メインフレーム「z/990」ではメインフレームOSのz/OSでJava VMを稼働し、そのうえで複数の仮想的なLinuxサーバを動かすことができる。業務別に用意された複数のUNIXサーバやLinuxサーバを、1台のz/990に統合することが可能。榊氏は「今年出荷するPOWER5プロセッサ搭載のUNIXサーバには、仮想的に複数のサーバを稼働させるメインフレームの機能を移植する」と説明したうえで、「技術を横展開できるのがIBMのよさ」と述べた。

 榊氏は「メインフレームの今後の40年はオートノミックを目指す」と宣言。「システムの複雑さにとらわれずに自律神経システムをモニターし、制御する。zSeriesは今後の40年に向けてさらに変身し続ける」。

 IBMは今後も関東、関西の大学でメインフレームセミナーを開催する予定で「20大学程度で開催したい」という。「テクノロジが見えにくくなっている中でメインフレームの価値を学生に認識していもらいたい」というのがIBMのメッセージだ。

(編集局 垣内郁栄)

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日本IBM
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