グリッドは混乱から抜け出せるか?

2004/7/6

 企業向けグリッド・コンピューティングの開発や導入推進を目的とする「Enterprise Grid Alliance」(EGA)の日本運営委員会が7月5日設立され、日本オラクル、EMCジャパン、サン・マイクロシステムズなど初期メンバーが設立発表会を行った。EGAは米国でオラクルが事実上の推進役を果たして作られた団体。日本運営委員会でも議長を日本オラクルの鈴木俊宏氏が務める。

Enterprise Grid Allianceの日本運営委員会 議長を務める日本オラクルの鈴木俊宏氏

 EGAでは、グリッドを「単一の企業内で使うフェイズ、複数の企業間で使うフェイズ、ユーティリティコンピューティングを考慮するフェイズ」の3つに分けて、12カ月から18カ月ごとに新しいフェイズを開始していくという。フェイズごとに、検証やデモの開発などを行う。「現実的な目標を持って進めていく」(鈴木氏)。

 グリッド関連の団体はすでに、米IBMが推進する標準化団体の「The Global Grid Forum」(GGF)や、国内では独立行政法人 産業技術総合研究所などが中心となった「グリッド協議会」などがある。

 鈴木氏は日本運営委員会が設立されたEGAの目的を、「エンタープライズ・グリッドの『ソリューションの開発』に焦点を当てる」とし、「標準を作ることは目的ではなく、標準の実用化や検証などを中心にやっていく」と説明。標準化団体としてIBMが推進するGGFとは違うスタンスであることを示した。

 しかし今回のEGA日本運営委員会にも日本IBMは参加していない。また、何を指して「グリッド」と呼ぶべきかといった基本的な定義が、ベンダや団体によって異なっており、そのメリットの説明にも隔たりがある。グリッドをめぐり複数の団体が存在するのも、自社のグリッド戦略を優先したいというそれぞれの企業の思惑が多少なりとも働いているのだろう。グリッド市場というものを発展させていくのであれば、「グリッドの定義とメリット」を、業界の共通認識としてユーザーに説明できることが必要だ。

EGA日本運営委員会設立時の参加企業
EMCジャパン
日本ヒューレット・パッカード
日本ネットワーク・アプライアンス
日本電気
日本オラクル
サン・マイクロシステムズ

(編集局 新野淳一)

[関連リンク]
Enterprise Grid Alliance(米)
The Global Grid Forum
グリッド協議会

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