ILMはチャーミングな言葉、でも意味不明?

2004/8/7

東京大学教授の喜連川優氏

 日本ヒューレット・パッカードとシスコシステムズ共催の「HP+Cisco ネットワークストレージセミナー」が8月6日、開催された。基調講演を行った東京大学教授で、SNIA-J顧問の喜連川優氏はストレージのインフォメーション・ライフサイクル・マネジメント(ILM)について、「ILMはいま、かなりチャーミングな言葉になっている」と述べ、注目のキーワードになっていると説明した。一方で、さまざまなベンダがILMを提唱しているために「意味がはっきりしない」と指摘した。

 ILMについてはストレージベンダの業界団体であるSNIAが現在、ワーキンググループを設けてその定義や業界としての取り組みについて協議している。喜連川氏によると、SNIAはこれまでストレージネットワーキングという情報の“器”について協議をしてきたが、今年からは加えて“器”に納める“中身”についても業界内で協議するよう方針を変更した。「データとストレージネットワーキングのオーソリティになる」というのがSNIAの目標だ。

 ILMはディザスタ・リカバリ(DR)とも密接に関係する。ILMがデータのビジネス上の価値を考えて、適切なコストでデータを管理する考えに基づいているのと同様に、DRもデータの価値を基準にデータを保護するからだ。

日本HP エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ネットワークストレージ製品本部 本部長 渡邊浩二氏

 同セミナーで講演した日本HP エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ネットワークストレージ製品本部 本部長 渡邊浩二氏は企業内のデータ管理の目的について、日々増加するデータを効率的に管理し、コスト削減、サービスレベル維持を実現する「データ管理」と、さまざまな法規制に準拠し、ビジネスのリスクを低減する「保管管理」、電子メールやドキュメントからビジネスにとって有益な情報を吸い出す「リファレンス情報管理」の3つがあると指摘した。企業がDRのシステムを構築する際にはこの3つの目的に合致した柔軟なシステムを設計する必要がある。そのためにはILMを導入し、データのビジネス上の価値を適切に判別することが前提となるという。

 ただ、市場環境によって変化するデータのビジネス上の価値を適切に判断するのは一筋縄ではいかない作業だ。HPは米国で5月に発表された「ストレージグリッド」のビジョンを適用し、データの管理をポリシーベースで自動化する考えを打ち出している。喜連川氏はDRについて「ILMを活用し、データのビジネス価値を考えて管理にメリハリを効かすこと」と指摘。一方で、データの価値を判断し、適切な管理手法を選択するのは「ユーザーには複雑すぎて手に負えない」として「より実効的な(ILMのための)ツールがここ1年くらいで登場すると期待できる」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

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