SOAはキューピッド、IT部門とユーザー部門の仲を取り持つ

2004/8/20

 「サービス指向アーキテクチャ(Service Oriented Architecture:SOA)はメインフレーム誕生からの40年の歩みをいったん止めて、アプローチを変え、これまで培ってきたものを生かしていくためのアークテクチャだ」。XMLコンソーシアム エバンジェリストでキヤノン PF開発企画推進センター 倉沢良明氏はこうSOAを説明。個人的意見としながら「SOAがもたらすメリットで最も重要なことは既存のIT資産を活用することによる、ROIの向上だと思う」と述べた。

XMLコンソーシアム エバンジェリストでキヤノン PF開発企画推進センター 倉沢良明氏

 倉沢氏は8月19日に開催されたXMLコンソーシアムセミナーで講演した。倉沢氏は企業のIT部門とユーザー部門の問題点を指摘。IT部門については、ユーザー部門からの発注をただ待つ姿勢で、新技術を追い求める意欲が失われていると説明し、求められることだけを行う受託部門化したことで経営戦略への関与ができなくなっていると述べた。また、IT部門は運用管理や開発のアウトソーシングや分社化が進み「分裂気味」と指摘した。

 倉沢氏はまた、ユーザー部門について「PCは万能、ITは魔法の小箱と誤解している」としてITへの過度な期待が発生していると話した。一方でIT部門の業務をビジネスの一部分に限定し、ユーザー部門が独自にシステムを導入してしまうなど混乱が起きていると説明した。

 このようなIT部門とユーザー部門との間に発生した断絶を修復するのがSOA、というのが倉沢氏の考えだ。業務プロセスについてノウハウがあるIT部門と、業務の仕組みが分かるユーザー部門のそれぞれの知識や資産を効果的に組み合わせることで、「業務をサービスとして組み替え可能なプロセスとする。ビジネスとITを結びつけて変化に即応できるようになる」という。「これからのIT部門はビジネス・スキルとITスキルの両方をビジネスの現場で兼ねそろえる必要がある。その際に重要な役割を果たすのがSOAだ」(倉沢氏)。

 倉沢氏が指摘した「SOAの最も重要なメリットは既存のIT資産を活用すること」が意味するのは、単に既存のハード、ソフトを連携させて柔軟なサービスを提供できるようになるということではない。IT部門がこれまで蓄積してきた運用管理や教育、ビジネスへの関与などさまざまなノウハウと、ユーザー部門が行ってきた業務改革などのスキルを組み合わせることを指す。企業が抱えるすべての資産やノウハウ、スキルを「リユースするための仕組みがSOA」(倉沢氏)ということになるだろう。

(編集局 垣内郁栄)

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