無線LANスポットを変える3つの新技術、JEITA

2004/9/3

 電子情報技術産業協会(JEITA) モバイル・ホームシステム協議会は公衆無線LANスポットでのユーザーの利便性を向上させる3つの新技術を開発した。開発を主に担当したのはNEC、富士通、日立製作所で、早期にビジネス展開できる実践的な技術を目指したという。モバイル・ホームシステム協議会では開発した技術の標準化と普及を図っていく。

 モバイル・ホームシステム協議会が開発したのは「シームレス認証技術」「プラグ&サービス技術」「シームレスハンドオーバー技術」の3つで、それぞれをNEC、富士通、日立が主に開発した。富士通の折田聡氏は現状の公衆無線LANスポットのサービスについて「通信キャリアやサービスプロバイダが垂直統合的なサービスアーキテクチャを採用しているため、オープンなサービス発展を阻害している」と指摘。「公衆無線LANサービスの各ビジネスレイヤで独立のビジネスを実施できるようなオープンサービスアーキテクチャが求められる」と述べ、開発の背景を説明した。

NECが行ったシームレス認証技術のデモ。企業での本社、支社でのシームレス認証を再現した

 NECが主に開発を担当したシームレス認証技術は、ユーザーがどの無線LANスポットからでも簡単にインターネットアクセスができるようにする技術。現状ではサービスプロバイダと無線LANスポットがひも付いているため、ユーザーは自分が加入するサービスプロバイダの無線LANスポット以外では、無線LANのサービスを利用することが難しい。シームレス認証技術では、ユーザーのクライアントにサービスプロバイダなどが発行する電子的な会員証を保存。無線LANスポットを利用する際に、スポットに設置された「設定BOX」を通じてクライアントを認証させる。認証によって、そのユーザーが利用できるサービスプロバイダを認識し、同時に設定BOXからクライアントに対して無線LANを利用するうえで必要なネットワークの設定情報を流し込む。ユーザーはこの設定情報を利用することで、インターネットに自動接続ができる。NECではシームレス認証技術を使うことで、ユーザーがどの無線LANスポットからでもインターネットにアクセスできるようになるだけでなく、複数のサービスプロバイダが共同でスポットを開設できるようになるなど、サービスプロバイダ側のメリットもある、としている。

 富士通が開発を担当したプラグ&サービス技術は、無線LANスポットを活用したプッシュ型の情報提供技術。スポットの位置情報を基に、サービスプロバイダはユーザーの現在地、属性、状態など識別し、その時のユーザーが最も好むと思われる情報をダイナミックに生成し、クライアントにプッシュ送信する。説明会ではPDAを持ったユーザーがスポットを移動するごとに、そのユーザーの好みに応じたレストラン情報がPDAに配信されるデモが行われた。

 シームレスハンドオーバーは日立が主に開発を担当した。携帯電話などを使った広域のデータ通信から、無線LANスポットの通信に切り替わっても、ストリーミング放送などのデータ通信を切断せずに維持する技術。ネットワークレイヤと独立したハンドオーバー制御レイヤを別に実装することで、異なるネットワーク間のハンドオーバーを実現するという。日立では「ネットワークサービス事業者に依存しない、どこでも使えるアプリケーションサービス継続の仕組みを提供できる」としている。

 NEC、富士通、日立の3社はモバイル・ホームシステム協議会を通じて開発した技術の標準化、普及を図っていくと同時に、自社のPDAや携帯電話、無線LANスポット用サーバに同技術を実装していく予定だ。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
電子情報技術産業協会の発表資料(PDF)

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