ソフトウェアITアーキテクト3倍増計画、日本IBM

2004/9/7

日本IBM 執行役員 ソフトウェア事業 三浦浩氏

 日本IBMは9月6日、ソフトウェア事業の強化策を打ち出した。ポイントは、(1)テクニカルサポート/品質の向上、(2)業種別営業活動の強化、(3)ブランド活性化へのさらなる注力、の3点である。これら3つのポイントの共通点は、ソフトウェアの最新技術に対する日本IBMの強みを全面に押し出すことにある。執行役員 ソフトウェア事業 三浦浩氏は「最近ではビジネスに傾斜した提案活動が主流になっており、技術力のアピールが足らなくなっていた」とする。このような原点回帰に向けた施策を展開することで、強いソフトウェア事業の再生を目指す。

 (1)テクニカルサポート/品質向上の面において同社は、IBMソフトウェア開発研究所(神奈川県大和市)内に「システムハウス(仮)」を設置する。同施設では先進的な開発案件専門の検証作業を行う。例えば、顧客企業が提案してきたシナリオをもとにした品質検証の実施や、IBMソフトウェア5ブランド製品群の統合テストなど。10〜15人の専任担当者で開始する。現時点では、政府機関と製造業系企業2案件の開発プロジェクトが進行中。

 なお、2002年12月に渋谷に設置したソリューションパートナー向けの検証施設「ソフトウェア・コンピテンシー・センター」(Software Center of Competency:SWCOC)とは、「先進性という部分で差別化を図っている」(三浦氏)としながらも、「(SWCOCの)位置付けについては現在、改めて検討している」とコメントした。

 テクニカルサポート/品質向上については上記の施策と同時に、現在海外の研究所で行われている“レベル2”サポートを日本IBMソフトウェア開発研究所でも実施する。三浦氏は「クリティカルな問題の解決に要する時間を従来比3分の2程度に改善したい」とする。20人強の専門人員を配置し、2005年末で70人程度の増強する計画だ。

 (2)業種別営業活動の強化という点では、ミドルウェア技術やIBM製品を熟知する上級エンジニア職「ソフトウェアITアーキテクト」を現在の35人から3倍強にまで増強する。ソフトウェアITアーキテクトは日本IBMのソフトウェア事業に属し、金融や流通といった業種別にそれぞれ配置されている。同社の業種別営業組織は、業種部門の下にサブ業種部門がいくつか連なっており、そのすべての業種別にソフトウェアITアーキテクトが1人〜3人程度配備されている。基本的な営業ユニットは、業種別の営業専門員と技術的なアドバイザーとしてのシステムエンジニア(SE)、要件定義をまとめシステム全体のアーキテクチャを設計するソフトウェアITアーキテクトで構成されている場合が多い。ソフトウェアITアーキテクトを3倍増とすることで、同社では営業力および提案力の大幅な強化につなげたい考えだ。人員は研究所を含め、日本IBM全体の中から募集をかける。

 (3)ブランド活性化の注力は、ソリューションごとに行われていた営業活動にブランド別の営業ラインを追加することで対応する。ソフトウェア事業は5大ブランドに分かれていたとはいえ、実際の営業活動はソリューションごとに行われていた。そのような体制を見直し、それぞれのブランドに事業部長のポストを設置、各事業部長に、ブランドそれぞれの製品、営業、サポート全体の責任を持たせた。実は2004年2月に米IBMのシニア・バイス・プレジデント兼グループエグゼクティブで、同社のソフトウェア事業を率いているスティーブン・ミルス(Steven A. Mills)氏が来日し、「個別ブランドのテクノロジを連動させて個別業界向けに提供する」と述べ、ブランドの融合、つまりソリューション展開に注力すると発表したばかりである。

 今年に入り、日本IBMのソフトウェア事業は、研究開発部門も含め、組織構造に積極的なメスを入れている。これを迷走ととるか前向きな改革作業ととるかは、2004年度あるいは2005年度の業績で判断するしかない。

(編集局 谷古宇浩司)

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