[Interview] Oracleが推進するハブアンドスポーク型の業務アプリケーション体系

2004/9/16

 昨年グリッドの“g”の下、「Oracle Database 10g」を大々的に発表した米オラクルは、今年10g上でさまざまなシステムを統合する「連携」という方向性を打ち出した。

 オラクルが9月6〜8日に英・ロンドンで開催した「Oracle OpenWorld London 2004」で、Oracleのチャールズ・フィリップス(Charles Philips)社長は、「Oracle Information Architecture(OIA)」というシステム体系で新戦略を説明した。「Oracle Database 10g」をベースに、顧客情報の単一の情報ビューを提供する「Customer Data Hub」、そして業務アプリケーション「Oracle E-Business Suite 11i.10」(EBS)が乗り、最上層の「Oracle Collaboration Suite」で情報を共有するというものだ。全体を管理するのは「Enterprise Manager 10g」となる。

 これまで、OracleのデータベースにOracleのアプリケーションを提唱してきた同社にとって、Customer Data Hubやミドルウェア層のアプリケーション統合機能、EBSの業界別ソリューションは新しい特徴となる。Oracleの統合技術について、Oracle Application Server開発担当副社長のトーマス・クリアン(Thomas Kurian)氏のプレス向けQ&A、および、Oracle Financials Development担当副社長のスティーブ・ミランダ(Steve Miranda)氏に行ったインタビューをまとめる。


――Oracleの統合ソリューションについて教えてください。

米オラクル Oracle Application Server開発担当副社長トーマス・クリアン氏は「(Oracleは)SAPのように難しいブランド名をつけて分かりにくくしない」という

クリアン氏 ポータル、アプリケーションサーバなどのOracleのミドルウェア製品群では、技術的に見て5つの統合ソリューションを用意しています。Enterprise Service Bus、Business Process Management、Business Activity Monitoring、BtoB Integration、業界別ソリューションです。

 Enterprise Service Busは、社内の異なるアプリケーションをつなぐもので、メッセージインフラを介して、あるシステムから別のシステムへとデータを渡すことができます。これにより、Oracleの発注システムとSAPのSCMを接続するといったことが可能になります。

 Business Process Managementは、ビジネスプロセスを自動化します。Business Activity Monitoringは、ビジネスイベントをが円滑に進んでいるか、問題があるとすればどこかなどの監視をリアルタイムで行うものです。

 ここまでが社内のシステム統合で、これから先は社外との統合になります。ここで、BtoB Integrationが登場してサプライヤやパートナーと接続するわけですが、Oracleでは(BtoBの“to”ではなく)“with”で他社と接続(連携)し、ビジネス上のやりとりを自動化するソリューションを提供します。

 最後のパッケージ化された業界別ソリューションでは、業界に特化したプロトコルをサポートすることにより、統合を容易に実現できます。例えば、ESBのSupply Chain Gatewayという機能では、ハイテク業界のBtoBプロトコルであるRosettaNetをサポートすることにより、Oracle Supply Chainモジュール外から注文を受け、ビジネスパートナーに渡すといったことが可能になります。

ミランダ氏 ESB側の統合技術としては、Webサービスを利用する接続のほか、900以上のビジネスイベントを用意しています。標準のビジネスオブジェクトもサポートしています。

――その特徴は何ですか?

米オラクル Financials Development担当副社長のスティーブ・ミランダ氏は「Customer Data Hubは容易に、簡易に、コストを押さえた統合を実現する。技術面では、実装はマイナープロジェクトだろう」と語った

クリアン氏 5つのソリューションは「Oracle Application Server 10g」に統合されているだけではなく、モジュラーとして別個に利用することもできます。

 ソリューションに用いられている技術は、JMS(Java Message Service)、JCA(Java Connector Architecture)、BPEL(Business Process Execution Language for Web Services)など100%業界標準技術です。つまり、顧客は特定のニーズも解決できるし、標準ベースの統合基盤を得ることもできるのです。EAIでは、ベンダプロプライエタリな技術が用いられていましたから、これは大きな変化といえます。実装が迅速・容易にでき、ベンダロックインもありません。

 現在、Oracleの統合技術を利用している顧客は1200社以上あります。実証されたソリューションといえるでしょう。

――Customer Data Hubはこれまでにない機能となっています。

ミランダ氏 現在の企業システムでは、アプリケーションごとにデータウェアハウスが構築されているなど、企業内で顧客情報がばらばらに点在しており、自社の顧客は誰か、どんな企業なのか、という疑問に答えられない状態です。

 これを解決するため、ハブアンドスポークの考えを顧客データにとりいれたのがCustomer Data Hubです。さまざまなアプリケーションに同一の顧客データレポジトリを提供するもので、スキーマは完全に分離しています。しかも、データモデルは新しいものではなく、データベースの10gで利用されているものと同じです。つまり、さまざまな規模や業種、使われ方で堅牢性が実証されたデータモデルといえます。

 重要なのは、Oracleのアプリケーションだけではなく、SAPやPeopleSoftなど他社のアプリケーション、あるいは自社構築アプリケーションともデータが共有できるという点です。つまり、Customer Data Hubは顧客情報の“single source of truth”となります。われわれは、データ源が単一であることは重要だと考えており、この“ハブアンドスポーク”型こそ、今後の統合手法と見ています。

――SAPが統合技術としてNetWeaverを推進しています。NetWeaverとの違いはなんでしょうか?

ミランダ氏 SAPのNetWeaverを理解していないので、Oracle技術のメリットを説明します(笑)。ミドルウェア層、アプリケーション側で統合に使われている技術はすべてオープンな標準技術である点、10gで堅牢性が実証されたデータモデルを用いている点、その上で各種ビジネスインテリジェンスを利用できる点の3点です。

 グリッドと統合技術により、“single source of truth”が可能になったわけですが、このモデルはスポークが増えれば、さらに価値が向上します。

 私が理解している限り、SAPの場合、データモデルが複数存在することになります。これは、データがいくつも存在してどれが本当なのか分からない“データの分断化”につながります。

(末岡洋子)

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