ビジネスモデルの実装の可能性を問う

2004/10/22

東京大学大学院 工学研究科 総合研究機構 俯瞰工学部門 教授 松島克守氏

 ビジネスモデルはシステムモデルにスムーズに落とし込めるのか? モデルは自動的にコードへと生成されるのだろうか? UMLとモデリングをめぐるこれらの難問について、「第3回 MDA Technology Forum(MTF:主催 オブジェクトテクノロジー研究所)」ではさまざまな角度から議論が行われた。

 多様な議論の中で、10月21日に基調講演を行った東京大学大学院 工学研究科 総合研究機構 俯瞰工学部門 教授 松島克守氏の立場とその意見は特にユニークなものだった。松島氏は基調講演において、自身の研究室で進めている“(企業における)商品企画のプロセス”のビジネスモデリングの成果を披露したが、「UMLで記述したモデリングの成果をコードに落とすことができるのかどうか、つまり、システムモデルに落とし込めるのかどうかは、現時点ではわからない」と話す。もちろん、記述されたUMLを参考にしながらJavaなりC#なりでコーディングをしていけば問題はないのだが、それではあまりにも切ない。松島氏の意見は、UMLのコードへの自動生成というモデル駆動型開発の根本問題にメスを入れるものだ。

 オブジェクトテクノロジー研究所 代表取締役の鎌田博樹氏は「ビジネスモデリングとシステムモデリングは別々の道をたどって発展してきた」とし、「残念ながら現時点では、ビジネスモデルからシステムモデルをつなぐ“舗装道路”はないといっていい」と話す。しかし、“舗装道路”はなくとも、“けもの道”はある。「中にはビジネスモデリングとシステムモデリングのバイパスをうまく通した人もいるのだが、そのような個別の技術が標準規格になるにはまだ時間がかかりそうだ。2005年にはビジネスモデルの実装化に関する標準規格が活発に議論されるようになる」と鎌田氏はいう。

 同フォーラムで講演したSWIFT(世界的な金融決済ネットワーク:Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)のリード・アナリスト キネス・ユン(Kineth Yuen)氏は、手作業でメッセージ指向の標準を整備する従来の方法を、ビジネスモデリングと自動化に基づくフォーマルなアプローチに転換しようとしている過程について話し、金融業界という特化したビジネスモデリングのシステムモデリングへの転換作業が順調に進んでいることを紹介した。鎌田氏は「SWIFTがMDAアプローチを採用したということは、SWIFTを利用した金融決済アプリケーションの開発の仕方が、全体としてモデルベースのものに移行していくきっかけとなると思われる」と評価している。SWIFTの事例はMDAの華々しい成功事例の端緒とみられている。このような“けもの道”を“舗装道路”にならしていくことがMDA普及の鍵を握る。

永和システムマネジメント 取締役 主席コンサルタントの平鍋健児氏

 第3回 MDA Technology Forumでは、要求仕様から実装の自動化、つまりコードの自動生成という課題を研究するかたわら、ビジネスゴールをどのように要求仕様として実現するかというより上位のモデリング課題を研究する「ビジネスモデリング研究会」がいくつかのセッションを受け持っていた。「失敗する開発プロジェクトの根本的な問題はどこにあるのか? そもそも要求仕様が間違っているからではないのか? 要求というのは開発されるべきもので、独自のノウハウが必要な分野であり、ここでUMLは記述言語としての有効性を持つ」と同研究会に参加する永和システムマネジメント 取締役 主席コンサルタントの平鍋健児氏はいう。

 理想的な姿はおそらく、開発された要求仕様がツールによって自動的にコードへと生成されるというものだろう。ここでいう自動化の議論はあくまで要求から実装にいたる過程での話である。MDAの議論の中心もここにあるようだ。しかし、「(MDAは)組み込み系なら有効だが、ビジネス系ではモデリングを行う場合のパターン(業種、業態など)が多様すぎて、標準的な規格を確立するのは非常に難しいのではないか」と平鍋氏はいう。

 では、UMLツールはソフトウェア開発においてどのような役割を果たすのか。例えば、日本IBMのRational RoseやボーランドのTogether、平鍋氏が属する永和システムマネジメントのJUDEといったUMLツールは、要求から実装をつなぐ段階のモデリング支援ツールとしての役割を果たしているというのが現状で、組み込み分野ではMDAが有効、ビジネス分野ではまだMDAは未来の話、というのは今回のMDA Technology Forumの講演でも明らかにされたことだ。平鍋氏は自身が開発に携わるJUDEについて、競合がひしめく現在の市場から組み組みシステム開発支援ツールおよび要求開発の支援ツールとして位置付けを拡張していく計画を持っている。無料ダウンロードが可能なJUDEは年間約20万ダウンロードの実績を持ち、約1万人の固定ユーザーを有するという。11月1日には有償版「JUDE/Professional」(2万9400円)を発売する。Eclipseのプラグイン版も現在開発中である。

(編集局 谷古宇浩司)

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