アイドルを起用したターボリナックス、戦略には疑問も

2004/10/22

 ターボリナックスはコンシューマ向けのクライアントLinux「ターボリナックス ホーム」を11月12日に発売すると10月21日に発表した。ターボリナックスはこれまでコンシューマ向けLinuxで、Windows OSのユーザーが違和感なくLinuxに移行できるようインターフェイスや操作感覚などの「Windowsability」(Windowsっぽいの意味、ターボリナックスの造語)を追求してきた。しかし、ターボリナックス ホームでは「Windowsになく、Linuxだからこそできることは何かをテーマに開発してきた」(ターボリナックス 代表取締役社長 矢野広一氏)という。

ターボリナックス 代表取締役社長 矢野広一氏(右)と「Linux普及委員会会長」に任命されたタレントの福下恵美さん

 ターボリナックスが、Windowsにない特徴として売り出すのがターボリナックス ホームの「より使いやすい」と「安全性」。Windows OSを使ったことがない初心者やホームユーザーをターゲットに「誰でも使えるデスクトップLinux」をアピールする。Linuxカーネルは2.6.0を採用。

 初心者が使いやすいようにログオン時のデスクトップには、各アプリケーションを起動するリンクを1画面に集めた「TurboHome」を搭載する。ユーザーはログオン直後に起動するTurboHomeにある「インターネット」「メールを読む・書く」「チャット」「ハガキ・年賀状を作る」などのアイコンから各アプリケーションを起動できる。アプリケーションはクライアントLinuxとしては初めてハガキ・年賀状作成ソフトの「筆ぐるめ for Turbolinux」を搭載。ドライバなしでデジタルカメラの画像を取り込める機能や、最新版の「ATOK for Linux」も搭載し、使い勝手を高めている。

 ターボリナックス ホームは、Windows OSなどがすでにインストールされているハードディスクドライブのパーティションを変更し、Linuxをインストールできるようにする「Partition Expert 2003」もバンドル。Windows Mediaコンテンツを再生できる「Turboメディアプレーヤー」などマルチメディア関連のソフトも充実している。

 安全性では、自動アップデート機能を搭載し、セキュリティホールを修正しやすいようにしている。ターボリナックスがセキュリティパッチを用意すると、TurboHomeに通知が表示。通知のアイコンをクリックすることでターボリナックスのサーバにアクセスし、パッチをダウンロードできる。

 ターボリナックスは、Windows OSと比較してLinuxのコンピュータ・ウイルス被害が少ないことを強調している。ターボリナックスのクライアントグループ プロダクト・マネージャ 久保和広氏は「2003年には3万件のウイルスが発生したが、Linuxに感染するのはそのうち6件だけ。私は5年ほどLinuxを使っているがこれまでウイルスを見たことがない」と述べた。

「昨年、WindowsのPCがウイルスに感染し困っちゃいました。新製品はウイルスに感染しないと聞いてLinuxはいいなと思いました」

 価格は1万6590円。ターボリナックス製品の既存ユーザー向けの優待価格は1万1340円などとなっている。ターボリナックスはイメージガールとしてタレントの福下恵美さんを起用。福下さんは「Linux普及委員会会長」として製品のPRを手伝うという。

 タレントまで起用し、「クライアントというとんでもなく高い山を登る」(矢野氏)ターボリナックスだが、今回のターボリナックス ホームには若干の疑問がある。それはPCの初心者やホームユーザーがわざわざLinuxを選択するかという根本的な疑問だ。アプリケーションを簡単に起動できるTurboHomeなどLinuxクライアントで初となる機能を搭載し、初心者に配慮したターボリナックス ホームだが、使い始めるにはターボリナックス ホームをPCにインストールする必要がある。Windows OSをプリインストールしたPCが多く販売されている中で、どれほどの初心者やホームユーザーが利用するかは未知数だ。

 また、ターボリナックスはLinuxの安全性としてウイルスに感染しないことを強調している。ターボリナックスは、ターボリナックス ホームのプレスリリースで下記のように記している。

ウイルスの心配はいらない!
Linuxをターゲットとするコンピュータウイルスは、ウイルス総数全体からみて微々たるもの。実際に被害を被ったレポートも届きません。なぜなら現在猛威を振るっているウイルスのほとんどがWindows実行ファイルだからであり、このことからもリナックス・デスクトップの安全性は実証済み。セキュリティ対策を実施する直接的間接的な手間やコストを削減でき、煩わしさから解放されます。

 ウイルスのほとんどがWindows実行ファイルであることは、Linuxの安全性を実証することにはならないのではないか。Linuxを対象とするウイルスが現在までそれほど作成されなかっただけで、今後も作成されないという確証はどこにもない。確かにWindows OSの現状と比較するとLinuxは安全性が高いといえるかもしれないが、Linuxが絶対的に安全とはいえないはずだ。そのような状況で、新製品がターゲットとする初心者に対して「セキュリティ対策を実施する直接的間接的な手間やコストを削減でき、煩わしさから解放されます」とまで断言することは少々短絡的ではないか。

(編集局 垣内郁栄)

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ターボリナックスの発表資料

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