システムの“のりしろ”IT基盤を強化せよ、NRI

2004/11/2

 野村総合研究所(NRI)のシステムコンサルティング事業本部 ITアーキテクチャーコンサルティング部長 嵯峨野文彦氏は11月1日、「ハードウェアやOS、ソフトウェアの平均寿命は5年、一方業務アプリケーションの寿命は10年以上といわれる。そのライフサイクルの差をどう埋めるかが課題」と指摘したうえで、「IT基盤がそののりしろになる」と述べ、IT基盤の重要性が増しているとの認識を示した。

野村総合研究所のシステムコンサルティング事業本部 ITアーキテクチャーコンサルティング部長 嵯峨野文彦氏

 嵯峨野氏はIT基盤の定義について「ベンダがいうハードウェアやOS、ミドルウェアなどの狭義のIT基盤に加えて、IT基盤をどう構築するかの戦略や技術標準、プロジェクトマネジメント、人材育成などが含まれる」と説明した。狭義のIT基盤がベンダの独自仕様などでブラックボックス化しているのに対して、嵯峨野氏がいうIT基盤はユーザー企業がリーダーシップを取れるITの領域ということになる。

 嵯峨野氏はユーザー企業がIT基盤をうまく構築し、運用管理していくことで、ライフサイクルが異なるハードウェアやOSと業務アプリケーションを柔軟に組み合わせていけると説明した。IT基盤に柔軟性がないと、ハードウェアやOSの寿命がくるたびに業務アプリケーションを修正する必要がありコストが増大する。IT基盤を構築することで「ハードウェアやOSを柔軟に構築できる」という。

 IT基盤という言葉はベンダから出てきた。しかし、嵯峨野氏は「ベンダはオープンに見せながらユーザー企業を囲い込んでいる。オープンの本当のメリットはユーザー企業がシステムをグリップできる可能性があること」と述べて、ユーザー企業が主導するIT基盤構築の重要性を強調した。すでにベンダのIT基盤を導入している企業であっても、「ユーザー企業が独自に“薄皮”をミドルウェアにかぶせることで、さまざまな環境に対応できるIT基盤が構築できる」とアドバイスした。

 NRIが行ったユーザー企業調査(2003年度)でもIT基盤の構築を重視する流れが出ているという。大手企業に「今後導入あるいは強化を検討したいと考える課題」について複数回答で聞いたところ、回答企業の72%が「システム基盤構成の見直し」と回答。「不要業務システムの棚卸し」(33.8%)や「サービスレベルの見直し」(36.4%)と答えた企業も多く、嵯峨野氏は「システムのスリム化にかかわるニーズが高い」と指摘した。嵯峨野氏はまた、今年度について「ITシステムの全体を見てメリハリをつけた投資傾向が読み取れる」と説明した。

(編集局 垣内郁栄)

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