グーグル第1号社員に学ぶ、エンジニア操縦術

2004/11/30

 優秀な製品やサービスを打ち出していた企業でも成長するに従い社内の意思疎通が難しくなり、部署間の対立などに陥ることがある。そのうちに魅力的な製品やサービスを提供できなくなる。いわゆる大企業病だ。2004年8月に上場を果たし、成長を続けているグーグル。そのグーグル最初の社員で技術部門 ディレクターのクレイグ・シルバースタイン(Craig Silverstein)氏は大企業病に陥らないために「エンジニアが何をやりたがっているかを把握するのが重要だ」と述べる。

グーグルの技術部門 ディレクターのクレイグ・シルバースタイン。盆栽など日本文化にも興味を持つ

 シルバースタイン氏は技術部門の責任者。グーグルのエンジニアが価値あるサービスを生み出すために「エンジニアの仕事がうまく機能するようにするのが仕事だ」という。技術的な指導を行うのはもちろん、シルバースタイン氏が重視するのはエンジニア間のコミュニケーションを促進し、グーグルの設立時からのカルチャーを維持することだ。

 コミュニケーションを促進することで各エンジニアの考えを把握し、新しいサービスの開発に導くのが目的。グーグルではエンジニアに対して、自分の好きなことをしてもよい時間を週に1度与えている。経営陣と部下との板ばさみになりがちなマネジメント担当者も週に1度は管理の仕事を離れて、好きなことができるという。活発なコミュニケーションと自発性を尊重する文化がグーグルを支えている。

 しかし、このようなグーグルのカルチャーに合わない人もいる。「技術的に優れていてもグーグルのカルチャーに合わない人がいて、その場合は採用を見送る」とシルバースタイン氏は述べた。グーグルにとってカルチャーを守るうえで最も重視するのがエンジニアの採用だ。シルバースタイン氏は採用にはかかわっていないが、「物事をやり遂げる人、自分から行動する人、検索技術に情熱を持っている人」で特に「会社にとってのゴールを共有できる人」が選ばれることが多いという。

 グーグルは世界各地に支社を設けている。今年12月には研究開発センターが東京にオープンする。社員が世界各地に分散する中で、今後の課題は「フレキシブルなコミュニケーション」とシルバースタイン氏は考えている。「会って話せば5分で解決する問題でも電子メールやメッセンジャーではこじれることがある。リモートオフィスでのコミュニケーションはまだ経験不足。いま最善の方法を考えているところだ」。

 シルバースタイン氏はグーグルのニューヨークオフィスを立ち上げた経験がある。ニューヨークのオフィスでは「1人のエンジニアがニューヨークの顧客向けに仕事をしたり、(本社がある)マウンテンビューのエンジニアとプロジェクトを進めたりとマルチに働いている」という。東京の研究開発センターでもエンジニアは日本国内向けのプロジェクトだけでなく、本社を始め、世界各地のエンジニアと共同プロジェクトを進めることになるという。

 シルバースタイン氏は、創設者のサーゲイ・ブリン(Sergey Brin)氏とラリー・ペイジ(Larry Page)氏が検索エンジンの研究をスタンフォード大学で始めたときからグーグルにかかわっている。「2人のプロジェクトを見て、とても興味を持ったんだ。自分でも検索エンジンの研究をしていたし。ただ、スタンフォードのプロジェクトは未完成だった。もっとすべきだと思ってグーグルに入社したんだ」とシルバースタイン氏は話す。「検索技術はどんどん楽しくなっていくと思う。私たちが始めたときからグーグルのカルチャーは変わっていないし、今後会社が大きくなっても変わらないと思うよ」。

(編集局 垣内郁栄)

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