アセロスが日本の無線LANのデファクトに?

2005/3/4

 アセロス・コミュニケーションズは3月3日、記者説明会を開催し、米アセロスCTOのウィリアム・マクファーランド(William J.McFarland)氏が2005年から2006年にかけての無線LANに関するトレンドを説明した。

米アセロス・コミュニケーションズ CTO ウィリアム・マクファーランド氏

 マクファーランド氏はまず、日本市場について「顧客とパートナー数ともに多い、中心的な市場」と評価。「アセロスの今後を考える際には、日本を中心に考えている」と語った。また、2005年から2006年にかけての無線LANについてのトレンドを「デュアルバンドシステム」「MIMO(Multi-Input Multi-Output)」「IEEE802.11n」「新たな無線LANアプリケーション」の4点挙げた。

 デュアルバンドシステムについては、米ニューヨークの45番ストリートを例に出し、「45番ストリートのある交差点では、50ものアクセスポイントが3つしかないチャンネルをシェアしている」と説明し、2.4GHz帯を使用するIEEE802.11b/gの商業的な成功によって、この周波数帯ではかなりの輻輳(ふくそう)が発生している点を指摘した。

 この問題を解決するためにも、2.4GHz帯を使用する802.11b/gと、5GHz帯を利用するIEEE802.11aを併用したデュアルチャンネル化が重要であると述べている。日本においても5GHz帯が5月に再編されることから、「2.4GHz帯が使いづらくなる一方で、ますます5GHz帯は使いやすくなる」とアピールした。マクファーランド氏は「2008年には、無線LANの8割がデュアルチャンネルになる」と予測している。

 マクファーランド氏はMIMOを、「複数の送受信アンテナを利用して通信速度を向上する技術である」と説明。MIMOでは「ビームフォーミング(BF)」「合成ダイバーシティ(MRC)」「空間多重(SM)」「時間空間符号化」などのテクニックを利用していると紹介した。これらのテクニックの中で空間多重は、「リンクの両側で新しいデバイスが必要になるため、既存のデバイスではメリットを受けることができない」(マクファーランド氏)と述べた。一方、ビームフォーミングや合成ダイバーシティでは、リンクのどちらか片方でも有効であるため、既存のデバイスと接続した場合には、空間多重よりも高いスループットが望めるという。

 IEEE802.11nについては、「各社の提案技術が却下されたり、合流したことにより最終的に『TGn Sync』か『WWiSE』のどちらかに決まる可能性が高くなった」(マクファーランド氏)と指摘。現在のところ、アセロスも支持する「TGn Sync」が132票、エアゴーネットワークスなどが支持する「WWiSE」が84票で、「TGn Sync」が一歩リードしている状況だと説明し、「TGn Syncの採用がほぼ確実なのでないか」(マクファーランド氏)と見通していることを明らかにした。

 またマクファーランド氏は、標準化のスケジュールを「最初のドラフトが2005年7月に公開される予定であり、そのドラフトを修正した最終版ドラフトが2006年3月くらい。2007年には正式規格として展開できるのではないか」と予測している。

 4つ目の「新たな無線LANアプリケーション」では、ホームゲートウェイなどのネットワーク機器に加え、ゲーム機やデジタルカメラ、携帯カメラ、自動車などにも無線LANが搭載されていくと述べた。また、「HDTVを転送する際には22〜23Mbpsの帯域を必要とするが、従来の無線LAN機器では、場所の問題により実現できない場合がある」(マクファーランド氏)と指摘。そのような場合でも、ビームフォーミングや合成ダイバーシティを利用することによって、家庭内のどこでも23Mbps以上を確保することができるという。

 なお、2月に日本法人を設立したエアゴーネットワークスがすでにMIMO技術を採用した製品を投入しているが、この点についてマクファーランド氏は、「エアゴーの技術は空間多重だけを利用した技術だ」と語り、「その技術は、さらにTGn SyncやWWiSEのどちらにも所属していない技術であるため、802.11nが標準化された際には旧式のものになってしまうだろう」と指摘した。

(@IT 大津心)

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