電子メールが裁判の決定的証拠に、重要さ増すメール管理

2005/3/10

 フランテック法律事務所の弁護士 金井高志氏はベリタスソフトウェアとマイクロソフトが共催したセミナーで講演し、電子メールについて「犯罪・訴訟の決定的証拠となり得る」と指摘した。金井氏はそのうえで「証拠になるにもかかわらず、企業の認識は薄い」として電子メール管理の重要性を訴えた。

フランテック法律事務所の弁護士 金井高志氏。慶応大学法科大学院の講師も務める

 金井氏は「電子署名および認証業務に関する法律」や民事訴訟法の条文を説明し、電子メールは「裁判所で証拠として認められる」と指摘した。また、電子メールの仕組みとして送信者と受信者が同じ内容のメッセージを持つために、「訴訟になったときに自分だけ電子メールを捨ててしまうと、相手がどのような電子メールの証拠を持っているかが分からずにとても困ることになる」と述べた。

 企業では通常、紙の契約書は社内の手続きルールに基づき慎重に処理され、相手先の企業に渡される。しかし、電子メールに関しては社内の手続きルールが整備されていないケースがあり、担当者が自分の判断だけで相手先に送信してしまうことがある。そのためチェックが不十分になり、訴訟になった際に不利になるというのが金井氏の考えだ。

 電子メールについては企業に長期間の保存を求める圧力も強くなっている。国会で継続審議となっている「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(サイバーテロ対策法案)では、捜査機関が通信事業者に対して電子メールの送信日時、発信者名、送信先などのログのうち、捜査に必要な個所を特定し、最大90日間の保存を求めることができるようにしている。

 また、米国では「Section 17A of the Securities Exchange Act of 1934」で、取引に関係するすべての電子メールを3年間保存させる義務を企業に課している。不正な会計処理をチェックする目的で同様の義務を課す流れは日本にもあり、企業にとっては電子メール管理の重要性が増すことが予想される。

 金井氏は「電子メールは裁判で極めて重要な証拠になる。その証拠価値を理解して企業はしっかりと電子メールを保存してほしい。また、情報管理をきちんとしないと電子メールが情報漏えいのツールになってしまう。企業は電子メールの保存、管理をいま以上に考えないといけない」と語った。

(@IT 垣内郁栄)

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