WindowsもUNIXフレンドリーになってきている、MS

2005/3/26

 オープンソースコミュニティが集まるイベント「OpenSourceConference2005」が3月25日に東京・大久保で開幕し、招待講演としてマイクロソフト 技術企画室 主席研究員である楠正憲氏が同社のオープンソースに対する取り組みを語った。

 楠氏は、自身を「10年来のUNIXユーザーである」と紹介。1998年ころには「LinuxのIPv6環境は敷居が高すぎる」と感じたことから、「Linux IPv6 RPM Project」や「Kondara Project」に携わり、「LinuxディストリビューションにIPv6を標準搭載する」ことを目標にコミュニティ活動を行ってきたという。その後、2001年に発生したワーム「CodeRed」「Nimda」などの影響でセキュリティに対するマイクロソフトの意識が変化し、その関係で楠氏もマイクロソフトへ入社した。現在は技術企画室で、米国本社へ日本の先端技術の紹介などを行っている。特に最近は、近藤科学の「KHR-1」に注目しており、米国へも「ロボットはもはや大企業の研究目的のためのアイテムではない」と報告したという。

マイクロソフト 技術企画室 主席研究員
楠正憲氏
  楠氏はUNIXユーザーから見たWindowsのイメージとして、「管理の自動化が困難」「開発環境が別売で高価」「コマンドラインが使いづらい」「UNIXとの相互互換性・運用性が低い」「顔が見えない、コミュニティが育たない」「最先端で何をやっているのか掴みにくい」などを挙げ、それに対するマイクロソフトのさまざまな取り組みを紹介した。同氏は「問題のいくつかはいまだに解決していないが、ほとんどはWindows NT4.0や98以降、解決しつつある」と解説している。

 UNIXとの相互運用性の向上では、WindowsとUNIXの統合環境における統合クロスプラットフォームネットワークサービスである「Windows Services for UNIX」をリリースして対応している点を説明。特にバージョン3.5からは無償でダウンロード公開している点を強調した。また、開発環境へのアクセス面では、「Platform SDK」や「.NET Framework SDK」、学生向け、研究室向けのライセンスを多数用意し、5000円程度で開発環境を入手できるようになってきていると説明した。コマンドラインの充実では、「Windows Script Host(WSH)」や「netsh、sh、csh」なども導入可能になったと解説。次世代WindowsのLonghornでは「Monad Shell(MSH)」と呼ぶ統合環境的なシェル環境を標準で用意するとしている。

 また、コミュニティの育成では、「答えてねっと」や「theSpoke」「GotDotNet」など多くのコミュニティサイトを開設し、コミュニティ作りに注力していると説明した。しかし楠氏は、米国と日本ではコミュニティ形成の差が大きいと指摘。「米国ではネットニュースが発達しており、マイクロソフトがコミュニティサイトを形成しなくてもコミュニティが成立しつつある、しかし日本ではこのようなコミュニティはなく、どちらかというとメーリングリストやWebサイトがメインだ」と述べた。そのほか、「顔の見える会社」になるための取り組みとして社員ブログなども取り入れている。最後に楠氏は「このような取り組みを通して、Windowsをより一層オープンソースフレンドリーなOSにしていきたい」と今後の抱負を語り、講演を締めくくった。

(@IT 大津心)

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OpenSourceConference2005

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