太平洋を越える2000ノードのグリッド環境

2005/4/9

 富士通研究所と米国子会社のフジツウ・ラボラトリーズ・オブ・アメリカは4月8日、富士通研究所が開発したグリッド・コンピューティングのミドルウェア「CyberGRIP」を使って、日米間をまたがる社内向けのグリッド環境を構築したと発表した。富士通研究所のグリッド・ノードを約3倍に拡張。合計で2000ノードのグリッド環境になったという。

富士通研究所 ITコア研究所 主管研究員 門岡良昌氏

 CyberGRIPは複数のサーバのコンピューティング・リソースを仮想化し、物理的なハードに関係なく、リソースをアプリケーションに割り当てることができるミドルウェア。サーバの空リソースを自動探索して、アプリケーションに割り当てる機能などがある。富士通研究所 ITコア研究所 主管研究員 門岡良昌氏の説明によると、「CyberGRIPは自律的ジョブスケジューリング機能があり、全体最適なジョブ実効を実現できる」という。

 CyberGRIPを用いるグリッド環境は、主に膨大な計算が必要になる企業や研究所のシミュレーション業務に利用されている。通信キャリアの移動通信システム開発部門では、基地局用変復調装置の設計シミュレーションに活用。また、富士通のサーバシステム開発部門でも利用していて、4月7日に発表した基幹IAサーバ「PRIMEQUEST」に搭載したLSIのテストパターン検証に活用した。LSIの出荷試験データの正当性を検証するのが目的で、門岡氏によると、従来の方法で2〜4週間かかっていた検証期間が、グリッドを使うことで2〜4日で終了したという。

 日米間に構築したグリッド環境は、主に米国から日本のリソースを利用できるようにするのが目的。米国でCADに関する研究を行っている部隊が日本の豊富なリソースを使うという。ネットワーク負荷など日米間でグリッド環境を作るには課題もあったが、ライブラリの自動配備とキャッシング技術の活用で負荷を低減できたという。門倉氏は「将来的には全世界の研究所を結び、地球規模のグリッドにしたい」と語った。

 富士通研究所は今後、グリッドの利用を一般業務に広げる際の技術課題を研究する。データベース処理やERPなど一般の業務でグリッドが期待されるのは、サーバへの投資の節約。一般的にサーバのプロセッサの利用率は平均すると2〜3割とされている。余っているプロセッサのリソースを別のサーバのアプリケーションに割り当てられるようになれば、それだけサーバの台数を減らすことができる。門倉氏によると、「最近は基幹系の業務でグリッドを使えないかという顧客の声が強くなっている」といい、富士通研究所は社外パートナーなどと連携しながら一般業務でのグリッド利用を研究する考えだ。

(@IT 垣内郁栄)

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富士通研究所の発表資料

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