HPC市場に臨むインテル、その思惑は……

2005/4/19

インテル 取締役 エンタープライズ&ネットワーク・ソリューションズ本部 本部長 町田栄作氏(左)と日本SGI チーフテクノロジーオフィサー 戸室隆彦氏(右)

 科学計算などのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野に対して、インテルがその存在感を強めている。従来、HPCプラットフォームは、1980年代のベクター・SMPシステムや1990年代の超並列コンピュータの歴史からも明らかなように、汎用コンポーネントの集積という形態で構築されているわけではなかった。しかし、現在のHPC分野にみられるクラスタ・システムは汎用「COTS(Commodity Off the Shelf)」コンポーネントを用いて構築される傾向にある。インテルが次世代Itaniumプロセッサ「Montecito(コードネーム)」で狙うのはまさに、COTSモデルの中核プラットフォームである。

 Montecitoはインテルが初めて市場に投入するデュアルコア/マルチスレッディングプロセッサになる。デュアルコアによりパフォーマンスとスループットが向上し、マルチスレッディングによって1ソケット当たり4スレッドを同時実行することが可能となる。さらに、2.5倍のキャッシュ容量(最大24MBのオンダイL3キャッシュ)を実現し、同社によれば「(従来製品と比較して)最大1.5〜2倍のパフォーマンスをたたき出す」という。

 このような戦略製品を、RISC/UNIXの牙城だったHPC分野に浸透させることが、Itaniumリリース後のインテルの目標だった。HPC分野は従来、ニッチマーケットとされていたが、一方で業界最高レベルの技術をアピールできる場でもある。同社にとって、HPC市場における存在感の強化は、Itaniumという新たなプロセッサの信頼性向上を図ることにつながるわけだ。そして、市場ではRISCからインテルアーキテクチャに、UNIXからLinuxへとプラットフォームの置き換えを望むニーズが少しずつだが拡大してきた。この流れに乗り、インテルは、アプリケーション、ミドルウェアといったHPCを構成するさまざまなコンポーネントもCOTS化する施策を推進する。同社によれば、この動きにより、HPCのアーキテクチャをエンタープライズシステムでも兼用できるビジネスモデルが築けるという。

 HPC市場の状況の変化により、従来は競合していた企業との新たなパートナーシップも築けるようになった。米SGIはHPC分野において、MIPS/IRIXという独自技術のスーパーコンピュータを多数導入していた実績があったが、いまではMIPSをItaniumに、IRIXをLinuxに変え、インテルとパートナーシップを結びながら、同市場で新たな存在感を示すことに成功している。

(@IT 谷古宇浩司)

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