本当の自分仕様を作れる? SAPの自動設定ツール

2005/6/10

 SAPジャパンは6月9日、同社製品の導入に必要な設定を自動化するツール「SAP Best Practices」(以下、Best Practices)の提供を開始すると発表した。Best Practicesは、中堅企業向けのSAP導入プログラム「mySAP All-in-One」を支援するためのツールとして、同社ユーザーに無償で提供される。

SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション統括本部長 玉木一郎氏
 Best Practicesは、業務シナリオに基づいたプロセスを選択するだけで、そのシナリオに必要なSAP製品の設定を自動的に変更するツール。「財務会計」の「資金管理」といった一般的な業務シナリオを選択していくだけなので、ITやSAP製品にあまり詳しくないユーザーでも設定が可能になるのが特徴だ。SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション統括本部長 玉木一郎氏は、「業務シナリオさえ理解していれば、システムの設定のほとんどはツールが代行してくれるので、システム設定に必要としていた時間を大幅に節約できる」とメリットを強調した。

 Best Practicesでは、シナリオに必要な機能群を「ビルディングブロック」とカプセル化した。例えば、在庫管理を設定するために必要な機能群は「在庫管理」、酒税計算に必要な機能群は「酒税計算」といった具合だ。ビルディングブロックは、業界共通のもので約50種類、1業種ごとに約50種類、2005年6月時点で約16業種分が用意されている。

 例えば食品業界のビルディングブロックの場合、食品業界に共通した「輸送管理」や「倉庫管理」といったビルディングブロックと、食肉業界特有の「食肉仕入販売」、乳業特有の「原乳製造販売」、飲料業界の「酒税計算」「空き容器回収」といったその業界別に必要なビルディングブロックが用意されている。

「SAP Best Practices」のデモ画面。シナリオごとにビルディングブロックが表示されているのが分かる
  玉木氏は「中堅企業でよく利用されているテンプレートは、最初からある程度シナリオが特定されており、その中から自分の会社に近いものを選択する方法が取られていた。しかし、Best Practicesでは自社のシナリオに合わせて“本当の自分仕様”のシステム設定が可能となる」と説明。すでに提供されている中国やニュージーランドなどの企業ではおおよそ3〜4カ月でERPが利用可能になったという。

 6月9日からは「R/3 Enterprise日本語版」向けを提供開始し、ERP2004版やCRM4.0版は7月26日から、第3四半期にはNetweaver04版をリリース予定。第4四半期には消費財や化学に対応したビルディングブロックをリリースするとしている。

 玉木氏は「Best Practicesだけで設定できるのは、恐らく全体の7割程度だろう。残りの3割は、専門家などが手動で設定する必要がある」と推測。一方でこのツールによって、ユーザー自身で設定できるようになってしまうとパートナー企業が開発したテンプレートの価値が薄まるのではないかという懸念については、「パートナーの本来の付加価値は、『プロジェクトを成功に導く』ことや『ユーザーを満足させる』ことだ。その点においては変化はないだろう」とコメント。「SAPが開発したビルディングブロックに関する開発ノウハウをパートナー企業に公開し、パートナー企業が独自のビルディングブロックを開発できるようにしていく」と、今後の予定を語った。

(@IT 大津心)

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SAPジャパン

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