サンがシービヨンド買収、コンポジット・アプリケーション参入へ

2005/6/30

 米国サンフランシスコで開催中のJavaOne。その2日目の朝に飛び込んできたのは「サン・マイクロシステムズがシービヨンドを買収」という予想外のニュースだった。シービヨンドはJ2EEに対応したSOAベースのアプリケーション統合製品「ICAN Suite」製品を持つ。サンはこの買収で、SOAをベースとした「コンポジット・アプリケーション」市場に大きな足がかりを得る。

買収の発表を行うサンのスコット・マクニーリ氏(左)と、シービヨンドのジェイムス・デメトリアデス氏

 シービヨンドの創設者兼CEOのジェイムス・デメトリアデス(James Demetriades)氏は、サンの会長兼CEOであるスコット・マクニーリ(Scott McNealy)氏と揃ってJavaOne 2日目のゼネラルセッションに登場し、買収が友好的であることを示した。「多くの企業では、ミドルウェアやアプリケーションを統合することに苦労している。シービヨンドは統合のためのゼネラルテクノロジをJ2EE上で提供する」(デメトリアデス氏)。サンはシービヨンドのICAN Suiteを、同社のサーバスイート「Java Enterprise System」に今秋ごろに統合する予定。

 企業内やインターネット向けのアプリケーションを構築するためのプラットフォームとして、JavaやJ2EEは大成功を収めた。だが、J2EEの分野ではIBMのWebSphereとBEAシステムズのWebLogic Serverが2大勢力を形成していて、サンはこの市場で大きな成功を収めることができなかった。

 しかし、SOAをベースにすでに構築された企業内のさまざまなアプリケーションを統合する「コンポジット・アプリケーション」が新たな盛り上がりを見せようとしており、サンはこの市場に対して、標準技術となるJBI(Java Business Integration)の策定と、シービヨンドの買収でリーダーシップを取りにいく構えだ。

 この考えはJavaOne会場に集まったデベロッパも同様だった。ゼネラルセッションの進行役を務めるサンのチーフリサーチャー ジョン・ゲージ(John Gage)氏は「1日目に最も人気があったのはJBIのセッションだった」と報告した。多くのデベロッパもコンポジット・アプリケーションの構築に興味があることが明らかになった。

 ただしJBIが標準としてすんなり定着するかどうかはまだ予断を許さない。6月23日に行われたJBI(JSR-208)の最終投票を、IBMとBEAシステムズは「品質に心配がある」として棄権している(仕様としては策定された)。買収したシービヨンドの製品にJBIを実装することをマクニーリ氏は記者向けの会見で明らかにしたが、IBMとBEA抜きでJBIが業界標準となるのは難しいだろう。

 また、.NETでSOAの分野に攻勢をかけるマイクロソフトも無視できないプレーヤーだ。マイクロソフトがJBIに対してどのようなスタンスを採るのかはいまのところはっきりしていないが、JavaOneの期間中にJavaとのインターオペラビリティに関するセッションが用意されていることから、JBIについて何らかのアナウンスが行われる可能性もある。

(@IT 新野淳一)

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