エンジニアとして過ごす「人生の時間の質」

2005/6/30

 オブジェクト倶楽部夏のイベント「オブジェクト指向実践者の集い」第4弾が6月29日、都内で開催された。今回のテーマは“プロジェクト・ファシリテーション 〜「ものづくり」から「チームづくり」へ〜”。基調講演を行った永和システムマネジメントの平鍋健児氏は冒頭で、自身のソフトウェア開発に対するかかわり方を振り返り、「技術」から「プロセス」「人」へとプロジェクト成功のための要因が変わってきたと話した。

オブジェクト倶楽部夏のイベント「オブジェクト指向実践者の集い」第4弾

 ファシリテーション(facilitation)という言葉には、(物事を)容易にする、円滑にする、促進するという意味がある。通常、ファシリテーションという場合は、効率的な会議運営のためのスキルなどを指すが、最近のソフトウェア開発業界では、ソフトウェア開発プロジェクトを円滑に進めるためのスキルを指す。

 ソフトウェア開発業界におけるファシリテーション再評価の動きは、オブジェクト指向をはじめとした技術的観点からの解決策が、結局は開発プロジェクトの混乱を収束させる決定的な鍵とはなりえず、同じように、開発プロセスの見直しもプロジェクトを成功に導くには決定的なソリューションとはなり得なかった、という経験に基づいている。そして現段階でいき着いた解決の糸口は、プロジェクトを構成する個々のメンバーに焦点を当て、彼らの能力を100%引き出す手法を研究することとなったわけだ。

 平鍋氏は「プロジェクト・ファシリテーション」(PF)という言葉を作り、その価値を5つに絞って紹介した。すなわち、「コミュニケーション」「行動」「気づき」「信頼関係」「笑顔」。さらに、これらの価値に基づく4つの原則として「見える化」「リズム」「名前づけ」「問題 vs. 私たちの構図」を提示した。このような独特の術語だけを見ると理解しづらいかもしれないが、「プロジェクト・ファシリテーション」(PF)の本質とは、ある指向性を持った集団の秩序をいかに保つか、というこれまで社会的に蓄積されてきた極めて基本的な人間の知恵のことだといえる。裏を返せば、ソフトウェア開発の現場では、このような基本的な秩序維持のノウハウが蓄積されてこなかったといえるのである。それ故にこそ、ソフトウェア開発現場の非人間的な労働環境が一部では指摘され、問題視されることになっているわけだ。

 「人生があって、仕事がある。その逆ではない。エンジニアとして過ごす人生の時間の質(QoEL=Quality of Engineering Life)を高めるにはどうすればいいか」(平鍋氏)。技術からプロセスを経て、人へと立ち返った開発現場の問題解決を探るオブジェクト倶楽部の方向性が正しいかどうか議論が分かれるだろうが、可能性の1つとして有効であることは、参加者の熱心な表情から明らかだった。

(@IT 谷古宇浩司)

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