日本初の電子書籍フェア開催、テーマは「戦後60年」

2005/7/1

 電子書籍ビジネスコンソーシアムは6月30日、出版社共同の電子書籍企画「戦後60年『今、戦争を考える』」フェアを開催すると発表した。電子書籍を対象に複数の出版社がフェアを開催するのは初めてのこと。文藝春秋、平凡社、岩波書店をはじめとした14社の出版社と旭屋書店、丸善、八重洲ブックセンターの各店舗合計10店舗が参加する。フェア対象は46タイトルで、7月8日から8月15日までの期間中にΣbook.JPイーブック・ジャパンで販売する。

フェア対象の書籍群。これらを電子書籍化する

 「マンガに比べて、人文書や社会科学書の電子書籍はなかなかブレイクしない」。同コンソーシアム参加出版社の代表者たちの電子書籍市場に対する認識は一致している。その要因には出版社自体が電子書籍に興味を持っていないという厳しい現実があるようだ。仮に、電子書籍がビジネス的な成功を収めることになれば、紙の書籍のビジネス領域を侵す恐れがある。このことが出版社内に意見の分裂を生む最大の要因となっている。

 とはいえ、現実の電子書籍市場規模の状況は2004年3月時点で18億円(インプレス「電子書籍ビジネス調査報告書2004」)に過ぎない。全刊行点数約40000点で割ると、1タイトルあたり4万5000円前後の売り上げにしかならない。この売り上げ水準では、ビジネスとして成立することは到底難しいといえる。

 既存書店との関係も電子書籍にとっては大きな課題である。電子書籍の売買において基本的に書店は介在しない。しかし、書店は販売機能だけではなく、(店舗に)訪れた人々と書籍をマッチングさせる強力なメディア機能も有している。書店が持つメディア機能が販売に貢献する力を無視することはできない。出版業界の電子書籍流通において、書店がどのような役割を果たしえるか。「今回の電子書籍フェアを通じてヒントが得る」(平凡社 社長 下中直人氏)こともフェアを開催する目的の1つである。

(@IT 谷古宇浩司)

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電子書籍ビジネスコンソーシアム

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