ヨドバシ・ショックで現実味 HPなどがRFIDラボのサービス開始

2005/12/7

 日本ヒューレット・パッカード(HP)、トーヨーカネツソリューションズ、IDEC、スリークの4社は12月6日、「HP RFID Noisyラボ・ジャパン」(Noisyラボ)におけるサービス開始を宣言、同ラボを報道陣に公開した。

 Noisyラボは、実地に近い環境でRFIDを検証できる施設として、2005年3月に設立が発表された。設立発表時点では、4月のUHF帯開放を受けて5月末にも運用開始の予定だった。しかし、共用化技術(RFIDリーダー間の相互干渉を防ぐ技術)に関する整備を待つために対応製品の出荷が遅れたことから、サービス開始がずれ込んだという。

 同ラボは、千葉県木更津市のトーヨーカネツソリューションズ研究開発センター内に設置されている。「RFID導入の際に、当初から現場で実証実験を行うと業務の障害になりやすいし、思わしくない結果が発生すると社内的な立場が不利になる場合がある。社内での検証の前段階で、このラボを使ってほしい」とHPのマーケティング統括本部RFIDビジネスリーダー、三宅信一郎氏は説明した。

入荷時の一括読み取り用ゲート。上の枠にアンテナが2つ見えるが(枠の両側面にもある)、その上にリーダーが設置されている

 Noisyラボの設備としては、高速認識テスト用ベルトコンベヤ、仕分けテスト用ベルトコンベヤ、出荷時のパレタイジング兼RFIDタグ読み込みシステム、入荷時の一括読み取り用ゲートの4種がある。

 RFIDでは、タグを張り付ける対象となる商品の材質や荷姿によって、システムとしての実効性や適した製品、利用ノウハウなどが変わってくる。たとえば商品が金属製の場合、電波が反射するため、タグの張り付け位置を工夫しなければならない場合がある。また、複数のアンテナが設置されたゲートに商品を通過させる場合、反射波の関係で「null点」と呼ばれる読めない位置ができてしまい、これをアンテナの設置点や運用に関する工夫でカバーしなければならないことがあるという。

 HPでは、商品の荷姿などに応じて、自社がこれまでのウォルマートとの実験などから蓄積したベスト・プラクティスを提案することができるとしており、さらに「お客様が何をやりたいかに応じてITシステムに関するコンサルティングを実施」(三宅氏)することで、ビジネスにつなげていきたい考えだ。

 Noisyラボは対象をEPCglobal対応のRFIDタグに限定しているわけではない。しかし、同社がEPCglobalの主力メンバーであることから、今後もこの国際規格に関連したさまざまな活動が計画されている。例えばIIJとの協力を通じ、EPCglobalのネットワーク機能をデモ、検証する環境を2006年1月以降に整備する。また、2007年初めには、米国、シンガポールに設置されているNoisyラボとの連携で、各国で異なる周波数に対応した国際的サプライチェーン・マネジメントの実験を行うという。

 HPは、日本で初めての大規模RFID導入として話題になっているヨドバシカメラに対してもアドバイスを提供している。

 記念セレモニーに出席した経済産業省の商務情報政策局流通・物流政策室長、浜辺哲也氏は、「政府としてもEPCglobalへの対応を進めてきたが、こういう施設ができたことは素晴らしい。ヨドバシカメラのRFID導入をきっかけとして、物流におけるRFIDで日本が貢献できるようになるべく支援していきたい」と語った。

(@IT 三木泉)

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