企業の広告費や販促費はマイレージポイントに替わる?

2005/12/22

 野村総合研究所(NRI)は12月21日、第32回メディアフォーラムを開催し、インターネットの普及によって、“Googlezon”と呼ばれるフロント企業と企業通貨を生み出している点について、米国の実情を踏まえて紹介した。講演したのは、野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング一部 上級コンサルタント 安岡寛道氏と、同 副主任コンサルタント 佐藤裕美子氏。

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング一部 上級コンサルタント 安岡寛道氏
 安岡氏はまず、インターネット改革によって“Googlezon”的企業(GoogleとAmazon.comが合体したフロント型企業)が登場し、企業はフロント型企業とそのほかのEnabler型企業の2種類に分離すると予測。フロント型企業とEnabler型企業を結ぶのが「企業通貨」になるとした。ここでいう企業通貨とは、航空会社のマイレージポイントに代表される「企業が発行する疑似通貨」を指す。

 従来、一般企業はテレビや新聞などのマス媒体に広告費を、既存流通網に販売促進費を支払っていた。しかし、インターネットやブロードバンドが普及した世界では、これらに加えてインターネットやブロードバンドを通じて一般企業から消費者へ、マイレージポイントや値下げなどで直接還元を行う方向に流れてきていると指摘。さらに、企業通貨のプログラムをいくつか連携していく流れが主流になりつつあるという。この点について、安岡氏は「もはや、CRMは1社ではできなくなっている。複数社が力を合わせなければ成立しなくなった」と説明した。

 日本では、マイレージポイントの利用率が20代〜50代で80%を超えており、さらに44.2%の消費者が「ポイントが付くかどうかで購入するサービスを選ぶ」と回答しているという。さらにほかの調査では、「マイレージポイントの使いやすさ」が差別化要因として重要であることが分かったとし、企業通貨の年間発行額は約3300億円に伸びると予想した。

 マイレージプログラム会員数は、米アメリカン航空が1位で約4600万人、2位が米ユナイテッド航空で約4300万人、日本では日本航空(JAL)が1700万人で7位、全日空(ANA)が1300万人で8位だった。米国では、会員数拡大のために「マイレージを獲得しやすくする」ことで魅力向上を図ってきており、実際マイレージ獲得の40%以上がクレジットカードの使用や通信費、光熱費の支払いなどによる航空券以外による獲得になっているという。

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング一部 副主任コンサルタント 佐藤裕美子氏
 このような施策でマイレージ会員は増加していったが、一方で特典航空券の還元割合の抑制などによって、消費者は「マイレージをきちんと還元できない」と不満を募らせるケースもあったという。そこで、デルタ航空などは他社のプラットフォームへ自社マイレージを流通させることで、顧客満足度の向上させる方針を打ち出したという。

 日本では、JALとJR東日本、ANAとTSUTAYA、楽天など、航空会社を中心とした提携によって企業通貨の相互交換が進んでいると指摘。調査では、スーパーや携帯電話、家電量販店などの日常的に利用する商品やサービスでのポイント貯蓄意向が高いほか、スーパーや携帯電話料金、食事券など、日常的に利用する商品やサービスへの還元意識が高いことが分かったという。

 これらを受けて、安岡氏は「還元率をコントロールした『ポイントの合従連衡/合併』によってプログラムの価値を高める」ことを提案。主に、メーカーと小売など消費の「バリューチェーン」、航空と鉄道など「サービス」、地域ごとの「エリア」の3種類の切り口で合従連衡を作ることが有効だとした。

 バリューチェーンの例では、自動車の販売の場合、自動車メーカーが販促でポイントを付与し、自動車パーツやメンテナンスサポートなどで使うという「商品のバリューチェーン」を挙げた。サービスでは、JALカードとSuicaのような交通サービスでの連携や、ブロードバンドインフラとISP、ポータルの連携などが想定される。地域では、渋谷と伊東市の「earthday money」など、地域や沿線企業を巻き込んだ合従連衡が有効だという。

(@IT 大津心)

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