SOA導入を簡単にする「SIerの知恵」、IBM、オラクルなど協力

2006/1/24

 日本IBM、日本オラクル、SAPジャパンなど7社は1月23日、米国で2005年11月30日に発表された「次世代SOAアプリケーションのためのオープン仕様」の説明会を開催した。オープン仕様はサービス指向アーキテクチャ(SOA)を実システムに展開するうえでの、技術的な課題を解決することを目的に開発。将来的には標準化団体に提案し、標準技術にすることを目指している。

 米国ではBEAシステムズ、IBM、IONAテクノロジーズ、オラクル、SAP、シーベルシステムズ、サイベース、Xcalia、ゼンドテクノロジーズの9社が連名でオープン仕様を発表した。国内では日本法人がないXcaliaを除く8社が参加する。23日の説明会にはシーベルを除く7社の担当者が出席した。

日本IBMのソフトウェア事業 ディスティングイッシュト・エンジニア 清水敏正氏

 米国で11月に発表されたのは「SOAのアーキテクチャによるコンポーネントやソリューションを作る際のプログラミング仕様」である、「Service Component Architecture」(SCA)と、「Service Data Objects」(SDO)。

 SCA、SCOが開発された背景には「SOAの問題がある」と日本IBMのソフトウェア事業 ディスティングイッシュト・エンジニア 清水敏正氏は指摘した。SOAのベースとなるWebサービスやJavaの技術は、異なるプラットフォーム間の相互接続で重要な役割を果たしている。しかし、それはシステムの基盤としてつながるということで、「プログラムがお互いに相互接続できるかというと、現状ではできない」(清水氏)。つまり「WebサービスだけではSOAの機能に足りない」という指摘だ。

 また、SOA環境ではさまざまな言語で書かれた既存のアプリケーションを呼び出して、修正したうえでコンポジット・アプリケーションとして組み合わせる必要があるが、「トランスペアレントにアプリケーションを呼び出す技術がなかった」(清水氏)。Javaにおいてもプログラミング呼び出しはJAX-RPCやJAX-WSなどの技術に依存していて、技術的に独立した仕組みを構築するのは困難とみている。

 SCAは「サービスのつながりを構築し組み合わせるモデルを提供する」ためのアセンブリー・モデル仕様と定義。SDOは「さまざまなデータに共通のアクセス方法を提供する」ためのサービス・データ・オブジェクトの仕様と定義されているが、具体的にはSCAの技術を使うことでシステムのインフラ部分にラッピングを行い、WebサービスやJAX、JSR、J2EEの仕様が変化しても上位のサービスの組み立てや実装が影響を受けないようする。「インフラをSCAでラッピングして隠すことで、開発者がビジネス・ロジックの開発に集中できるようになることを狙っている」(清水氏)

 インフラをラッピングすることで技術変化の影響を受けないようにする考えは、システム・インテグレータ(SIer)などが開発してきたフレームワークと似ている。フレームワークではJavaなどの技術に依存する問題を隠ぺいし、フレームワーク上で稼働するプログラムが長期間使えるようにする。清水氏は「SCA、SDOはSIerの生活の知恵に近い」と述べた。

 SCAは現在バージョン0.9で、Java言語とC++言語の仕様が参加各社のWebサイトなどで公開されている。SDOはバージョン2.01でJava言語とC++言語の仕様が公開。BPEL版、PHP版も検討している。ライセンスはApacheライセンス。開発ツールとして、Eclipseで稼働する「Eclipse SOA Tooling for SCA」も提案している。

 SCAは2006年中にもバージョン1.0が発表される見通しで、米国の参加各社は1.0を標準化団体に提案する考えだ。標準技術と認められた場合、SIerがSCAの仕様を組み込んだフレームワークを出したり、開発ツールベンダが対応ツールを用意すると見られる。オラクルなどシステム製品、アプリケーション製品を持つベンダや、SAPなどのアプリケーション製品とミドルウェア製品を持つベンダも、製品の対応を検討する。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
米オラクルの発表資料

[関連記事]
SOA実現へオラクルがスイート攻勢、データ統合で差別化も (@ITNews)
SOA化は簡単? IBMらが既存ソフトのSOA化作業を検証 (@ITNews)
「手にとって分かるSOAを提案します」、HPとBEA、MSが協業 (@ITNews)
「SOAは夢の仕組み」、ついにSOA本格対応を始めたIBM (@ITNews)
ESB導入でSOAの展開を迅速に、BEAがESB製品をリリース (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)