「2010年に顧客数4倍」、SAPジャパンが強気目標

2006/1/31

 SAPジャパンの代表取締役社長 ロバート・エンスリン(Robert Enslin)氏は1月30日に開催した戦略説明会で、2006年度の同社のソフトウェア関連の売り上げとして、前年度比15〜17%増を目指す考えを示した。同社の2005年度の売り上げは前年度比8%増で「2001年度以来の好業績を達成した」。顧客へのアプローチ強化やパートナー新施策の投入で、世界市場と同程度の成長を維持するとしている。2010年には顧客数を4倍にする中長期目標も示し、「アグレッシブだが達成できると思う」と述べた。

SAPジャパンの代表取締役社長 ロバート・エンスリン氏

 エンスリン氏は会見でエンドユーザーに直接アプローチする新しい施策を強調した。1月に設立したバリュー・エンジニア本部は「顧客のビジネスから考えてITをアプローチしていく」ための組織で、ERP導入によるコスト削減や売上増などの効果をプロジェクトの企画段階で算出する。顧客満足度の向上を狙い、エンスリン氏は「バリュー・エンジニア本部は顧客にパフォーマンスの指標を作ってもらう」と説明した。

 2006年度は、300社以上が参加するSAPのユーザーグループから声を拾い上げて製品開発に生かす「カスタマー・バリュー・オフィス」や、エンドユーザーと直接対話する「Let's Talkキャンペーン」なども実施する。

 SAPはNetWeaverやESA(エンタープライズ・サービス・アーキテクチャ)など新しいテクノロジを相次ぎ、投入している。これらのテクノロジをエンドユーザーに浸透させるにはシステム構築やインフラなどのパートナー企業との協力が不可欠だ。エンスリン氏はパートナー向けの「パートナー・エッジ」と呼ぶ新しいプログラムを2006年中に立ち上げる考えを示した。

 中長期目標ではパッケージソフトウェアの利用が少ない金融、公共、小売の3業種に力を入れると説明した。この3業種は「手作り好き」(玉木氏)な業種だが、手組みアプリケーションも含めて柔軟にビジネスプロセスを統合できるESAを活用できるとみている。SAPは顧客の固有の要件をパッケージソフトウェアに取り込む「カスタマー・ディベロップメント・チーム」もあり、3業種のニーズをESA上で提供していく。

 アプリケーションに力を入れる日本オラクルにもエンスリン氏は言及し、「ソフトウェア関連売上は日本オラクルの5.8倍」と指摘。買収戦略を採る米オラクルに対して「一連の企業買収が生んだ不確実性がSAPへの移行を後押し」とプレゼンテーション資料で記述し、「SAPは買収ではなく、有機的に成長をしている」と述べた。

 同日、日本オラクルの取締役常務執行役員 アプリケーション事業推進本部長 保科実氏は@ITの取材に対し、「日本オラクルはOracle E-Business Suite(EBS)の400社弱のインストールベースはすべて把握しているが、EBSからSAPに移行している事実はない」と述べた。逆に「SAPからEBSへの移行を検討しているのは120件。実際に商談になっているのは50件に上る」と指摘した。

(@IT 垣内郁栄)

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SAPジャパンの発表資料

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