NECがUWBの最終利用形態に近づくLSI技術を開発

2006/2/7

 NECは2月6日、UWBで利用する帯域を、従来よりも大幅に広げるトランシーバ技術を開発したと発表した。同社はこの技術を、米国で開催中の国際固体回路会議(ISSCC 2006)で2月6日(現地時間)に発表する。

新技術を開発したNECシステムデバイス研究所の所長を務める住広直孝氏

 UWBは、3メートル以内の近距離で最大480Mbpsの高速伝送を実現する無線通信技術。最大到達距離は10メートルで、この場合は110Mbpsとなる。DVDレコーダーからテレビへの高精細動画伝送や、PCと周辺機器の接続などの用途で普及することが期待されている。

 NECが今回発表したのは、マルチバンドOFDM方式に基づくUWBトランシーバ技術。従来の技術では、実装が必須とされている3432MHzから5016MHzまでをカバーする3バンドにしか対応していない。しかし新技術では、3432MHzから9768MHzまでの12バンドに対応している。多数のバンドに対応することで、将来UWBが普及し、相互に隣接して利用されるようになった場合でも、より効果的に干渉を防ぐことができるようになる。

 NECは、単一のフィルタとアンプで12バンドすべてをカバーするシンセサイザを開発。各バンド用にそれぞれフィルタとアンプを設ける必要がなくなるため、チップ面積の増大を防ぐことができる。周波数間の切り替えは9ns以下で実行可能という。

 さらに、高周波特性を向上させるため、90nmのCMOSプロセスを採用してアンプを実現した。この場合、電源電圧の低下に伴い、S/N比が劣化するため、ノイズ対策が重要になってくる。しかし、ノイズ除去回路を電源-GND接続と並列に配置し、ノイズのみを引き出して位相を反転させてから加算するという方法で、この問題を克服したという。

 従来の技術では1.5V以上の電源電圧で動作するものがほとんどだが、新技術は1.1Vで動作する。NECでは、今回純粋なCMOSを用い、10GHzまでの周波数帯をカバーしたということからも、際立って優れた成果だとしている。

(@IT 三木泉)

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