無線ICタグ基盤をASPで提供、ベリサインと三井物産が協業

2006/3/14

 日本ベリサインと三井物産は3月13日、無線ICタグを使った流通情報プラットフォームの構築で協業したと発表した。世界標準のEPCglobalに準拠したネットワークを両社で構築し、流通や物流などの企業がICタグを使ったサプライチェーンを低コストで実現できるようにする。三井物産の取引先を対象に、今夏にも一部のサービスを始める予定だ。

 両社は、EPCglobalの規格に則ったネットワークを構築する。ネットワークは、次世代バーコード体系「EPC」に準拠した商品のシリアル番号を登録する「Root ONS」と、ICタグから得られる商品の現在地など、動的な情報をリアルタイムで格納、提供する「EPC Discovery Services」、ユーザー会社側に設置して商品の状態をDiscovery Servicesにプッシュ形式で登録する「EPC Information Services(IS)」の3つのコンポーネントで構成。インターネット上で運用する。

日本ベリサインの代表取締役社長兼CEO 橋本晃秀氏(右)と三井物産の常務執行役員 物流本部長 松本順一氏

 個別のユーザーはWebブラウザを使ってRoot ONSに問い合わせる。Root ONSはEPCと商品の属性情報を変換し、リアルタイム情報を持つInformation Servicesを検索する。検索結果から分かるEPC ISの場所をWebブラウザに通知。この情報を基にWebブラウザは個別のEPC ISにアクセスし、在庫情報や出荷情報、販売情報などの必要な情報を得る。特定商品の流通履歴を確認するなどトレーサビリティにも利用できる。

 EPC ISはインターネットにおけるWebサーバに当たる。物流会社などの社内に設置するほか、ホスティングも可能。この仕組みは「VeriSign EPC Starter Service」の名称で日本ベリサインが2004年10月から提供している。

 現状では、このようなEPCglobal準拠のネットワークを作るには物流会社などが個別にシステムを構築する必要がある。日本ベリサインと三井物産はこのネットワークをプラットフォームとして複数の企業や業界で共通化し、ASP型でサービスを利用させることを考えている。共通化することで、インターネットを通じて他社が蓄積した情報なども、技術的には入手しやすくなる。日本ベリサインの代表取締役社長兼CEO 橋本晃秀氏によると、企業が個別にネットワークを構築するのと比較して、2社のサービスを利用すれば10分の1の構築、運用コストになるという。

 三井物産は自社がユーザーとなってまずはサービスを利用する。同社によると社内にすでに50〜60のパイロットプロジェクトが稼働しているという。その後は数千社あるという同社の取引先に展開し、利用を呼びかける。その後に一般企業に対してサービス展開する方針だ。三井物産戦略研究所のシニア プロジェクトマネジャー 御手洗正夫氏は、物流におけるコンテナやパレットなどの容器を管理するサービスを計画していることを明らかにした。両社はサービスの提供で初年度に数億円〜10億円程度の売り上げが期待できるとの見通しを示した。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
日本ベリサインの発表資料
三井物産

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