ボーダフォン日本法人買収のソフトバンク孫氏、「世界進出」も

2006/3/18

 「気がついてみれば、かなり遠くにきたものだ。まだまだ満足はしていないが、これでやっとソフトバンクが目指してきたデジタル革命への一通りの構えができた」。ソフトバンクの孫正義社長は、ボーダフォン買収に関する3月17日夕方の記者会見の冒頭で感想を述べた。

記者会見直前まで交渉をしていたソフトバンクの孫正義社長

 ソフトバンクの記者会見は午後5時開始のはずだったが、孫氏がボーダフォン日本法人のウィリアム・モロー社長、ヤフーの井上雅博氏とともに登場したのは午後5時半すぎ。契約の細部について直前まで交渉していたためだと孫氏は説明した。

 ソフトバンクとボーダフォンは昨年末まで、ソフトバンクが新たな周波数割り当てを使って準備してきた携帯電話サービスを補完すべく、MVNOとしてボーダフォンの回線を借りるために交渉していた。「しかし、よく考えると買った方が早いのではないか」(孫氏)。今年に入ってからソフトバンクはボーダフォンに買収を申し入れたという。

 「基盤を持っているところからスタートした方が、確実に大きく事業を伸ばせる。ネットワークも自前で敷こうとすると何年もかかる」。携帯電話の世界で経験の豊富な人材やノウハウを活用できる点も魅力だったという。新規参入の携帯電話事業者にとって端末の調達が困難であることも、買収の理由の1つであったことを孫氏は率直に認めた。「ユーザーの数が少ないと、端末を供給してくれるメーカーは少なく、交渉がしにくい」。

 1500万人の契約者を獲得しながら、携帯電話業界で第3位に甘んじているボーダフォンだが、これをYahoo! BB、日本テレコムと組み合わせることで、ソフトバンクはアクセス回線のフルラインアップを確保。固定と携帯のそれぞれの既存販路を活用したクロスセルで、双方をさらに広げていくとしている。「価格破壊者となるのか、寡占クラブの一員になるのか」という記者からの問いに対しては、「まだ話せる時期ではない」とした。

 新規参入事業者として総務省から割り当てを受けたばかりの1.7GHz帯周波数については、「総務省と相談しながら方向性を決めたい」という。「もし戻せというなら、既存事業者としてNTTドコモやKDDIと比べた場合に、HSDPAなど将来の高速なサービスに十分な周波数をもらっているか、800MHzなどの効率の良い周波数はどうかなど議論した後で、収まるべきところに収まるだろう」。

 孫氏は、今後のNTTグループやKDDIとの競合について、「(2社は)音声では立派だが、データ(通信サービス)やコンテンツで見ると、ソフトバンクはほかより先をいっている」と強調した。

左からボーダフォン日本法人のウィリアム・モロー社長、ソフトバンクの孫正義社長、ヤフーの井上雅博社長

 コンテンツの柱はもちろんYahoo!。「NTTドコモの公式コンテンツ数は5844、auは4720。ボーダフォンでは3300だが、Yahoo! Mobileは月間11億ページビューがある。さらに膨大な数のインターネットサイトがある」。Yahoo!はこれまでYahoo! BBでやってきたのと同様に、ボーダフォン向けの付加価値コンテンツを開発していく。「現在のモバイル・コンテンツはキャリアの制約が大きい。このためやりたくてもできなかったことをやっていきたい。これからVodafone live!をボーダフォンと一緒に作っていく」とヤフーの井上社長は語った。

 孫氏は「世界進出」の考えについても明らかにした。今回の買収と同時に、英ボーダフォンとデータ/コンテンツサービスに関する世界的なジョイントベンチャーの実施に関する同意書(letter of intent)を取り交わしたという。

 「ボーダフォンは日本では3位だが、世界的な観点から見ると、ボーダフォンとソフトバンクは膨大な顧客基盤を持っている。世界の携帯電話加入者21.5億のうち、ボーダフォン・グループには5.1億人の契約者がいる。これはすべて、データ・プラットフォームの潜在顧客になる。日本のモバイルポータルを、世界のモバイルポータルにすることができる」。

 孫氏はeコマースを例に、これを説明した。Yahoo! Japanのショッピング、オークションからの手数料収入は、それぞれ210億円と380億円。NTTドコモとKDDIは、ショッピングやオークションからの手数料を得る事業モデルを展開していないが、ボーダフォンと世界的に組めば、マーケットは非常に大きい」。

 孫氏はこの事業アイデアが、今回の買収に至った大きな動機の1つだとする。買収交渉当初、ボーダフォン側からは「先進的な市場(である日本)との直接的なつながりがなくなるのはもったいない」との懸念が示されたという。これに対し、ソフトバンクが引き取るともっと強くなり、これとボーダフォンの世界的なサービスが一緒になれば、ボーダフォンにとっては日本からの撤退でなく、世界的なビジネスの強化につながると説得したという。

 固定・携帯の双方を備える最大手キャリアになったソフトバンクだが、「決して総合通信会社になったといわないでほしい。それではちょっと小さすぎる。ソフトバンクが目指しているのは、総合デジタル情報カンパニーだ」と孫氏はいい切った。

(@IT 三木泉)

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ソフトバンクの発表資料

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