NTTドコモ、新市場開拓でモバイルキャリアからプレーヤーに

2006/3/31

NTTドコモの代表取締役社長 中村維夫氏

 NTTドコモが事業範囲を急速に拡大している。おさいふケータイでクレジット事業を開始し、ワンセグ(携帯電話向け地上デジタル放送)対応サービスで放送事業に参入するなど、事業の種類も多様だ。NTTドコモの代表取締役社長 中村維夫氏は3月30日、都内で会見し、これらの新規事業の展開に関する背景を説明した。

 携帯電話サービスを軸としたモバイルキャリア事業は、新規加入者の増加傾向がピークを迎えたことで一段落し、サービス幅の拡大期へと入っている。それらのサービスはいずれも未開拓市場である。市場への迅速な参入による先行者利益の確保が同社の矢継ぎ早な新事業展開を支えているようだ。

 現在、同社が注力する事業は5つ。

 1つはワイヤレスブロードバンドサービスの実用化である。同社は3月28日にWiMAXの屋外実証実験用無線局の免許を総務省に申請している。2つ目はおさいふケータイ。ローソンと資本・業務提携し、ドコモの携帯電話でクレジット決済ができる体制を構築すると3月28日に発表した。3つ目は通信と放送の融合だ。日本テレビ放送網およびフジテレビと提携し、2008年までに携帯電話向け地上デジタル放送の新たなビジネスモデル構築を目指す。4つ目は海外投資。3月22日に同社は北マリアナ諸島(グアム島〜サイパン島)の移動体通信事業者 Guam Cellular&Paging,Inc.(グアムセルラー)を買収すると発表した。5つ目はキッズケータイの展開。発売後約1カ月で8万台(9割が新規契約)を出荷したという。

 これらの事業のうち、海外投資については、実は国内市場における競争力の強化と密接な関係がある。グアム、サイパンへの日本人渡航者数は年130万人といわれる。同地域における携帯電話の主要通信方式はCDMA2000であり、NTTドコモが推進するW-CDMAではない。同様の状況は日本人渡航者の多い韓国でも同様。同地域に設備投資を行うことで、ローミングサービスの拡充を目指す。結果的に、国内市場でのイニシアティブ獲得にもつながるという目算である。

 ワンセグについて、現状では、固定テレビ向け地上デジタル放送と同じ内容しか放送できない(サイマル放送)ため、新たなビジネスを展開する余地がほとんどない。2008年には、ワンセグ向けに編成した専用番組の放送が解禁となり、「有料コンテンツの展開や、新たなコマーシャルビジネスが行える可能性がある。ただし、日本における無料放送という文化が障壁になる」と中村氏はいう。

(@IT 谷古宇浩司)

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