ブレード1200台のHPCCクラスタ、国際共同素粒子実験で活躍

2006/4/7

 第43回 超並列計算研究会が4月6日、都内で行われた。同研究会がハイパフォーマンス・コンピューティング・クラスター・システム(HPCC)の最新事例として紹介したのは、高エネルギー加速器研究機構が新たに導入した「Bファクトリー計算機システム」だった。

高エネルギー加速器研究機構 計算科学センター 真鍋篤氏

 Bファクトリー・プロジェクトとは、世界57の大学、約400人の研究者によって進められている国際共同素粒子実験のことである。この実験で使用する巨大な加速器(Belle加速器)は日々大量のデータを出力する。これらのデータを収集・解析するコンピュータ・システムがBファクトリー計算機システムである。従来型のBファクトリー計算機システムでは商用UNIXを搭載したワークステーション数百台〜1000台をRAID構成にすることでデータの収集・解析を行っていた。プログラム内のIf文による大量の分岐を伴うモンテカルロ・シュミレーションが処理の中心であることに変わりはないが、解析すべきデータ量が指数関数的に増加することが予想されたため、同機構では、計算機システムの刷新に踏み切った。

 新システムはEM64T対応Xeonプロセッサを搭載し、Linuxを組み込んだブレード・サーバ1208台で構成されるPCクラスターである。計算科学センターの真鍋篤氏はシステム移行の背景として「需要に対する予算の絶対的な不足」を挙げる。そして、ある程度以上の規模、オープンな仕様による競争入札では、大幅なディスカウントが期待できるとして、契約年数の長期化や予算の集中といった組織内の調整を行い、より安価で、なおかつ研究ニーズを十分に満たす機能を持ったシステムへの移行準備を開始した。

 導入を担当した企業の1社であるデルは、10月14日の開札直後に発注処理・工場生産を開始し、10月28日にブレード・サーバ約1000台をキッティング倉庫に納品した。Bファクトリー計算機システムのような大規模システムをコモディティ製品で構築する場合、やはり、ベクトル、RISC SMPマシンなどの大規模モノリシック・システムでは無視できる問題が顕在化してしまう、とデルのHPCCコンサルタント 本田泰隆氏はいう。とはいえ、解決できない問題ではなく、現在では問題を解決するための専用ツールや解決方法の蓄積量も充実しているとする。

(@IT 谷古宇浩司)

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超並列計算研究会

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