発注者にやさしいシステム仕様目指し、大同団結

2006/4/13

 国内ITベンダ6社は4月12日、情報システムの開発受託に関し、発注者に分かりやすい仕様の記述方法を共同で検討することに合意したと発表した。6社は2007年度上期にかけて順次、ベストプラクティスをガイドラインにまとめる作業を共同で進め、成果物を公開していくという。

左から東芝ソリューション、NEC、NTTデータ、富士通、日立の各代表者

 参加したのはNTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、構造計画研究所、そして東芝ソリューション。ほかの企業の参加も歓迎しているという。

 「発注者にとって分かりやすい仕様は、かなり前から課題だった。昨年9〜10月にかけて、NTTデータと富士通が議論している中で、(こうしたガイドラインを作成できる)可能性がありそうだということになった。できの良し悪しは別として、多くのベンダが同じような書き方をすることができれば、顧客にとって便利なので、12月から各社に声をかけた」と事務局を務めるNTTデータの山下徹副社長は話した。

 発注者に理解しやすい要件定義がますます求められるようになってきている背景を、参加各社は次のように説明する。

 以前は情報システム部門が発注企業の業務部門に対する翻訳者の役割を果たしてくれていたが、最近では業務部門が直接ITベンダに直接発注するケースが増えてきており、開発者視点での要件定義が理解されにくくなっている。また、従来システム化されていなかった新しい業務を情報システムで実現する例が増えているため、誤解が生じやすくなってきているという。

 富士通の平田宏通常務は、「顧客側のステークホルダーが多くなってきていると同時に、顧客と一緒に開発することが多くなってきているという現状もある」と指摘する。

 これまで発注者側でも要件定義を発注者に分かりやすく見せる工夫は見られた。しかしこうした努力は、個人やプロジェクトの単位でばらばらに行われており、発注側にとっては必ずしも分かりやすいものになっていない。

 「そこでこれらの工夫を集大成し、いいものを選んで体系化することにより、顧客にとって便利なものを作りたいと考えた」(NTTデータ 山下副社長)

 具体的には、まず画面遷移・定義を手はじめに、ビジネスプロセス、データモデル、業務ロジックの順に、仕様記述方法に関する各社の工夫を持ち寄り、評価して指針を作成する。それぞれの指針についてはユーザーにも評価してもらい、成果は公開するとともに、より多くの企業に採用してもらうべく、普及活動を行うつもりという。

 「ベンダによって(仕様書の)見せ方が違うのでは顧客が困る。同じルールで見えるように、6社に限らず多くのSI業者に使ってもらいたい。これは差別化の道具ではない」(NTTデータ 山下副社長)

 成果物がどれほど有効性のある指針になるかは未知数の部分が大きいが、「何も手をつけないではすまされない」と山下氏は話した。最低限、顧客の注文を正確に理解し、あいまいな部分については顧客と一緒に詰めていくための共通の土台としていきたい考えだ。

 分かりやすい要件定義ができ、顧客とベンダとの間の誤解を減らせれば、ベンダにとっては「手戻りコストが減らせるし、顧客には早く決めてもらうことができる」(NECの寺尾実常務)

 6社による取り組みは経済産業省にも賛同してもらっているという。また、今後は日本情報システム・ユーザー協会や個別のユーザー企業からの協力も得たいとしている。

(@IT 三木泉)

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NTTデータの発表資料

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