内部統制文書の標準フォーマット狙う? アドビ「PDF/A」

2006/5/17

 アドビシステムズは内部統制を構築するうえでの標準文書フォーマットとしてPDFをアピールする考えだ。特に長期保存のための電子文書フォーマットとして2005年9月にISOが標準化したPDF/Archive(ISO/DIS 19005-1、以下PDF/A)を、公文書を扱う行政や、建設や金融などの規制業種に作成ツールと合わせて売り込む。

 記録・情報管理に関する国際組織「ARMA International」の東京支部 理事 西川康男氏は、内部統制評価の説明責任に耐えられる文書が求められていると指摘。加えて国際標準への準拠やIT化への対応も必要として、「内部統制に耐えられる文書化=修正変更ができない記録のガイドラインとしては、ISO 15489-1がうってつけだ」と語った。ISO 15489-1は記録管理の国際標準として制定されたガイドラインで、記録について真正性、信頼性、完全性、利用性の4点を求めている。

 西川氏は「PDF/AはISO 15489-1に対して適合性を提供している」と語り、ISO 15489-1の要件にPDF/Aが合致すると説明した。ISO 15489-1は記録に対して媒体を規定していないが、上記の4つの要件を求めるフォーマットしてはPDF/Aが適しているとの考えだ。

アドビシステムズのマーケティング本部 ナレッジワーカー部 部長 市川孝氏

 PDF/AはAdobe PDF 1.4をベースに開発。暗号化や他社の特許がかかわる圧縮、ファイル埋め込みなど将来的にファイルを閲覧できなくなる可能性がある機能を1.4から除外し、仕様を固めた。アドビのマーケティング本部 ナレッジワーカー部 部長 市川孝氏は「自己完結型で環境依存性を制限している。将来的に同じ状態で見られることを保証する」と説明した。

 アドビ製品はPDF/Aの作成に対応している。作成できるのは「Adobe Acrobat Professional 7.0.7」「Adobe Acrobat 3D」「Adobe LiveCycle PDF Generator 7.0」「Adobe LiveCycle Forms 7.1」。現状では「PDF/Aを作れるのはアドビだけだ」(市川氏)。電子署名やOpenType、JPEG2000などに対応した「PDF/A-2」も2007年中に標準化される見通し。PDFではほかにエンジニアリング向けの「PDF/E」が2007年前半にも標準化される予定、ユニバーサルアクセスの「PDF/UA」も標準化の議論が始まっていて、アドビは「業界のニーズ、顧客からの要望に基づいて標準化に取り組む」としている。

(@IT 垣内郁栄)

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アドビシステムズ

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