野村総研が分析する次世代Webの進化の方向性

2006/5/19

野村総合研究所 技術調査部 研究員 堀祐介氏

 野村総合研究所は5月18日「ITロードマップセミナーSpring 2006」を開催した。テーマは“Web2.0時代を支える最新技術動向”。Web2.0を巡るWebの現状から、リッチクライアント技術、検索技術、端末技術など、Web2.0の文脈で語られる周辺技術動向の解説や、ビジネスモデルの展開などについて同社の研究員が研究成果を発表した。

 同社 技術調査部 研究員 堀祐介氏は、Web2.0を「Webの進化の方向性、成功事例の共通的特徴をまとめたもの」とする。そのうえで、情報モデル、ビジネスモデル、技術トレンドとい3つの観点から、Webの変化を指摘した。

 情報モデルという観点において重要なのは、消費者が直接情報を発信するメディア(Consumer Generated Media:CGM)が台頭してきた点にある。ブログやSNS、WiKi、ユーザーレビューサイトなどがそれに当たる。これらのメディアで生成される情報は口コミマーケティングの発展を促した。企業でも、商品開発で消費者の口コミ情報を積極的に活用するケースが増えてきている。

 消費者の情報(購買履歴や口コミ)を活用し、ビジネスを展開する企業の代表として、米グーグルや米アマゾンが挙げられる。彼らのビジネスモデルは、消費者の情報と連動した小口の広告配信や、死に筋商品の少ない売り上げを長期間にわたって積み上げることで大きな売り上げとするというような、“セルフサービス型ビジネス”であると堀氏は指摘する。多数の消費者が入力した情報を、多数の消費者が利用することで成立するビジネスモデルである。

 そして、このようなビジネスモデルが実現する素地となるのが、Webの技術革新だ。CGMの台頭で増大した情報を検索し、フィルタリングする技術や、消費者に最適化な情報を届ける技術(RSS/ATOMフィード)、リッチクライアント技術がそれにあたる。

 最近では、大量のブログを分析するために、メタデータによる分析精度の向上を図る動きがある。ブログの記事にメタデータを付与するというアプローチで、メタデータ仕様の1つであるMicroformatsは、hReview、hCard、hCalenderなどのフォーマットを定義することで、ブログの分析精度向上に貢献する。堀氏は「このような軽量なメタデータが普及することで、企業や消費者は精度の高い分析が行えるようになる」とするが、これらのフォーマットを意識せずに記述できるツールの開発といった課題も指摘した。

 最後に堀氏は、次世代Webの進化の方向性として、3つのポイントを挙げた。1つ目は「大量の顧客IDを保持し、活用するビジネス」が今後も発展していくこと、2つ目は「メタデータの普及」の加速、3つ目は「よりリッチなクライアント表現、Webサービスの普及、多様な端末への技術波及」だった。

(@IT 谷古宇浩司)

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