伊藤忠テクノ、CRCが合併 業界3位入りを狙う

2006/5/24

 伊藤忠商事グループの伊藤忠テクノサイエンス(CTC)とCRCソリューションズは10月1日付で合併すると5月23日に発表した。製品販売に強みを持つCTCと、システム構築、運用・保守を得意とするCRCが統合することでシナジー効果が出せると判断した。新会社の代表に就任する予定のCTC 代表取締役社長 奥田陽一氏は「ユニークなビジネスモデルで上から3番目に入る企業を目指す」と述べ、新会社をNTTデータ、野村総合研究所(NRI)に続くITサービス企業に育てる決意を示した。

 存続会社はCTC。新社名は「伊藤忠テクノソリューションズ」で、CTCの略称は使い続ける。売り上げ規模は約3000億円、社員技術者が約5000人のITサービス企業になる。

CTC 代表取締役社長 奥田陽一氏(左)とCRCソリューションズの代表取締役 社長執行役員 杉山尋美氏

 CRCソリューションズの代表取締役 社長執行役員 杉山尋美氏は「両社は単体でも安定成長できるが、もう一段の飛躍のためにギア・チェンジが必要と判断した」と合併の理由を説明した。そのうえでCTCの課題として、製品販売のウェイトが高いことと、情報通信や金融の業種にビジネスが偏っていること、ITライフサイクル全般をカバーするリソースが手薄なことなどを説明した。

 対して、CRCに対してはデータセンター事業の拡大にはさらなる財務基盤、営業基盤が必要と指摘。コンサルティングや製品販売への対応力、大型案件を担当する人的リソースも十分でないなどと説明した。杉山氏は「統合によってこれらの解決を狙う。それにとどまらず、新しい会社では両社が一体となりさらなる飛躍を続ける」と話した。

 新会社が目指すのは、運用・保守とシステム構築、製品販売の比率が「4:3:5」になる企業だ。奥田氏はこのような比率でビジネスを展開するITサービス企業はほかにないとして、「(NTTデータ、NRIとは異なる)3番目のカテゴリとしてユニークなビジネスモデルを持ち、規模でトップ集団に入る会社を目指す」と語った。

 新会社では両社の強みを活かして、特定業務、特定業種を得意にする企業に育てる。業務ではCRM、SCMなどのフロント系基幹アプリケーション構築やインフラ基盤構築、データセンター運用などに力を入れる。業種では両社がこれまで手がけてきた情報通信、金融、流通などに注目する。総合力を持ち、ITライフサイクル全般をサポートできる企業が目標だ。

 特に「新会社のコアは運用・保守などのサービスビジネスになる」(奥田氏)と見ていて、長期的な収益拡大を目指す。2007年後半にはサービスビジネスの拡大やシステム構築能力の増強、人的リソースの最適配分などのシナジー効果が出てくると見ている。

 CTCとCRCは同じ伊藤忠商事グループということもあり、合併がささやかれてきた。しかし、過去の段階では「シナジー効果が出ないと考えていた」(杉山氏)ために実現することはなかった。「CTCのメーンは製品販売で、CRCは開発、運用だった。さらに固定客とじっくり付き合う“農耕民族”のCRCと、絶えず新しい顧客を開拓する“狩猟民族”のCTCでは会社として目指す方向、企業文化が違う、とこれまでは外部に説明してきた」(同氏)。

 両社が合併に舵を切ったのは「ここにきてCTCが製品販売から保守・運用、システム構築にシフトし、CRCに近づいてきた」(杉山氏)からだ。杉山氏は「両社の方向が同じになり、統合のメリットが出せると判断した」と語った。

(@IT 垣内郁栄)

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