キャリアとの関係を強化し、大企業に食い込むジュニパー

2006/5/24

Accelerateというキーワードを強調するためにF1の格好をして派手に登場した米ジュニパーネットワークス アジア太平洋地域チャネルセールス担当副社長ゲーリー・キンスリー氏

 ジュニパーネットワークスは5月23日、タイの首都バンコクでキャリアパートナー向けイベント「Carrier Partner Summit」を開催。キャリアパートナー向けの新しい支援プログラム「エンタープライズ・エンゲージメント・イニシアティブ」(EEI)を発表した。

 イベントのキーワードは「Accelerate:加速」。ジュニパーはキャリアパートナー支援を強化することで、両者の関係を加速させていくという。冒頭に登場した米ジュニパーネットワークス アジア太平洋地域チャネルセールス担当副社長ゲーリー・キンスリー(Gary Kinsley)氏は、「今年は当社が設立して10年目になる。10年前の1996年に設立された会社は米国でおよそ1030社だが、そのうち年間売上20億ドル以上に成長したのは当社だけだ」と同社の実績をアピール。次に登壇した同 フィールドオペレーション担当上級副社長エディ・ミンシャル(Eddie Minshull)氏が同社のエンタープライズ市場向け戦略を説明した。

 ジュニパーは2004年にネットスクリーンを買収した後、従来のキャリア向け市場からエンタープライズ市場へと重点市場をシフトしており、現在ではエンタープライズ市場の売上が全体の3分の1を占めるにまで成長した。アジア・パシフィック地域は全世界売上の約25%以上で、北京やインドに開発施設を設立するなど一層同地域への重要性が高まっているという。ミンシャル氏は競合他社との最大の差別要因を「R&D(研究開発)への投資度合いが違う。この業界では売り上げの18%〜19%の投資が普通だが、当社は昨年41%の投資を行った。それによりテクノロジが他社の一歩先をいけていると自負している」と説明した。

ジュニパーと競合他社の製品分野別シェア。おおむねジュニパーは2位につけている

 続いて登壇したアジア太平洋地域キャリア・パートナー ジェームス・ウィルソン(James Wilson)氏がEEIなどキャリア向けのパートナー戦略を説明した。そもそも、キャリアはジュニパーにとっては有力な顧客であったが、近年同社がエンタープライズ市場へシフトしていることもあり、キャリアが顧客とパートナー(リセラー)を兼任するようになった。その背景には、「当社が今後ターゲットにしていきたい大企業や金融系など、大手のエンタープライズユーザーはキャリアなど大きなベンダに安心を覚え、発注する傾向にあるからだ」(ウィルソン氏)といった理由があるという。従って、エンタープライズ市場を開拓したいジュニパーは、キャリアとパートナー関係を築いて大企業などに食い込みたい思惑がある。

 今回発表されたEEIは、キャリア向けパートナー支援プログラム。業種別のマーケットをきちんとカバーする「マーケットカバレージ」と、ターゲットを絞って“どうやったら売れるのか?”を研究・支援する「エンタープライズエンゲージメントプログラム」、教育改善などを行う「パートナー開発」の3つで構成される。そして、このプログラムを成功させるための戦略には「利益の拡大」「チャネルプログラムへの投資」「ビジネスを簡単にする」「パートナーをサポートするチーム作り」の4点を用意。これらの施策でキャリアパートナーの数を今後も拡大していきたいとした。

 最後に登壇した同 アジア太平洋地域担当エンタープライズ・マーケティング・ディレクター アンドリュー・マ(Andrew Ma)氏が2月に発表した統合セキュリティルータ「SSG 500シリーズ」をデモを交えて紹介した。SSG 500シリーズは、ファイアウォール、IPSec VPN、IPSの機能を1つにまとめたルータ。マ氏は同シリーズの特徴を「とにかくパフォーマンスに優れている。1Gbpsのスループットがでるほか、モジュラー化されているため、各種アップグレードが容易な点もポイントだ」と説明。さらにシマンテックやサーフコントロールといったセキュリティベンダと協力することで、質の高いセキュリティ機能を提供できるとした。

アンドリュー・マ氏が行ったデモ結果を表にしたところ。左の青いグラフがジュニパーの「SSG 520」、右側の赤いグラフが競合製品のスループット

 同氏が行ったデモでは、「SSG 520」とシスコの「ISR 2851」に負荷を掛けてスループットを計測する実験を実施。SSG 520がファイアウォール機能やIPS機能などをオンにしてもスループットが低下しないのに対して、競合製品はオンにすると数分の1にスループットが低下していた。これを受けてマ氏は、「すべての機能をオンにしてもスループットがあまり落ちないことから、管理者の居ない中小企業にも有効だ」と語り、同社の優位性を主張した。

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