NGNでシスコを超えるか、NEC矢野社長が「攻め」の新戦略

2006/5/30

 NECの執行役員社長 矢野薫氏は5月29日会見し、NGN(次世代ネットワーク)への集中投資などを柱とする経営戦略を発表した。通信キャリア向けのサービスプラットフォーム構築などを加速させることで今年度に営業利益1300億円を目指す。矢野氏は「ITとネットワークの両方を持つのがNECの強み。これがシスコシステムズとの違いだ」と語り、NGN需要をバネに収益向上を図る考えを強調した。

NECの執行役員社長 矢野薫氏

 NTTやKDDIなどの通信キャリア各社は、レガシーな通信ネットワークからフルIPのネットワーク、NGNへの転換を急いでいる。NGN上で柔軟にサービスを展開し、ユーザーからの収入を増やすのが目的の1つだ。矢野氏はNGNについて「ネットワークの中にITが組み込まれた新しいインフラだ」と説明。「通信キャリアだけでなく、ユーザー企業、個人に大きな影響が出る」と話した。そのうえで、NGN上のサービスアプリケーション、サービスプラットフォーム、トランスポートシステム、各種デバイスが今後活性化すると予測。「NECはこれらのマーケットチャンスをしっかりつかむ」と話した。

 NECは2005年度、NGN分野の研究開発費を従来の約2倍にし、通信キャリアなどの需要に対応する。国内で30%程度のシェアがある通信キャリア向けネットワーク機器のシェアアップを目指し、製販の一体化など事業体制を強化。また、NGN上でサービス提供を行うためのプラットフォーム向けソフトウェアの開発に注力する。特にSIPサーバやiモードゲートウェイ、ネットワーク管理などのソフトウェア開発を拡大する。

 NGNの低レイヤを支えるトランスポート製品についても40G光伝送対応製品の開発やWiMAXなどのワイヤレス技術、ルータ開発などに取り組む。矢野氏はNGNに取り組むNTT、KDDIからすでに受注していることを明らかにし、「通信キャリアにとってNGNは明日の課題ではなく、今日の課題だ」と語った。

 通信キャリアのNGN化で企業ネットワークも刷新を迫られるとNECは見ている。「サーバ統合やグリッド、シンクライアントなどが現実のアプリケーションとして使われるようになる。この動きをとらえて提供したい」(矢野氏)。NGN対応の需要をつかむためにNECは、ITシステムとネットワークの融合製品「UNIVERGE」の開発、販売体制を強化する。開発は100%子会社のNECインフロンティアに7月1日付で移管し、開発力を高める。販売ではシステム構築の要員を含めて約200人増員した。UNIVERGE全体で、売上高で15%以上の成長を目指す。

 システム構築事業はNECグループ全体の開発標準、管理標準を展開することで収益力を確かにし、赤字プロジェクトの低減を目指す。NEC本体のプロジェクトマネージャの増員や、受注前審査によるリスク管理体制構築を通じて、利益率を10%程度まで引き上げるのが目標だ。「2005年度は若干、収益性が下がったが今年度は元に戻す」(矢野氏)

 ただ、NECの成長には携帯電話事業、半導体事業の再生が不可欠だ。矢野氏は携帯電話事業について、松下電器産業との開発協業の検討を開始したことを表明。「2社のブランドを生かしながらスケールメリットを出せる体制」を探るという。半導体事業についてはNECエレクトロニクスの事業拡大に協力することで、収益を向上させる。NGN対応システムLSIの共同企画、開発も進める。

 矢野氏は「NECはいままで経営構造改革を集中的に実行するフェイズだったが、それがひと段落した。次の課題は顧客のためにわれわれのエネルギーを使うことだ」と話し、大きなビジネスチャンスととらえるNGNをてこに「成長に向けて攻めに転ずるときだ」と強調した。

(@IT 垣内郁栄)

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