NEC、NGNに役立つ研究開発をアピール

2006/7/1

 NECで研究開発を担う知的資産R&Dユニットは6月30日、NGN(Next Generation Network)時代に向けた同社の研究開発の内容を報道関係者に公開した。

 知的資産R&Dユニットは中央研究所、ソリューション開発研究本部、知的財産事業本部で構成されており、基礎技術の開発から、ビジネスモデルの可能性を踏まえた先行開発や実証実験まで、同社における事業化を積極的に支援するための活動を展開しているという。

階層型に構成されたサービス統合フレームワーク

 同社が紹介したNGN関連の研究開発内容は、サービスプラットフォーム関連でサービス統合基盤、マルチメディアPush to Talk、トランスポート関連で40Gbps WDM装置、GMPLSによる光IP連携ネットワーク制御、量子暗号ネットワーク、端末機器関連で細粒度スレッド並列処理マルチコアプロセッサなど。トランスポートだけでなく、新たなサービスを生み出すための基盤や環境作りに力を注いでいるという。

 サービス統合基盤としては、独ハイデルベルグに置かれたNECヨーロッパ欧州ネットワーク研究所の研究活動を紹介。同研究所では、Open Mobile Allianceに準拠した階層型のサービス統合フレームワークを開発したという。

 同フレームワークでは、携帯電話によるプッシュ・トゥ・トーク、インスタントメッセージング、プレゼンス管理などの各種機能にポリシーを適用するためのレイヤをかぶせ、これにアプリケーションがアクセスできるように高度に抽象化されたAPIを提供。ポリシーレイヤでは、動的なポリシー(災害発生などの理由によって通話が輻輳した場合には、災害対策関係者の通話のみを許すなど)を適用できるようにしている。

 このサービス統合フレームワークが商用化できるのは約2年後という。通信事業者だけでなく、システムインテグレータがこうしたフレームワークを付加価値サービス業者に提供する形態も考えられるとしている。

自動的にきめ細かな並列化を実現するマルチコアプロセッサ

 携帯電話や車載機器をターゲットとしたマルチコアプロセッサでは、同社は現在、「MPCore」という製品を評価用に出荷中。しかしこの製品は、プログラムの並列化作業については、最適化ツールの支援を受けつつ、人手によりスレッド並列化を行えるにとどまっている。

 NECが今回プロトタイプを展示した「Pinot」という製品は、低電力消費を実現するマルチコアプロセッサ。投機実行ハードウェアを実装したことで、並列化における処理順序不正の検出や実行の取り消し、やり直しといったプロセスを効率よく行うことができる。このため、プログラムの並列化作業を完全に自動化することができたという。

 4コアの場合で、例えば従来人手による並列化では4カ月かかり、並列化による処理速度向上効果は1.9倍であったものが、3分で並列化作業を終えることができ、処理速度向上効果は2.8倍に向上するという。

 このプロセッサの実用化は2010年頃になるという。

(@IT 三木泉)

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