IT業界の「現場力」はたった30点

2006/7/20

IT業界の現場力は30点

 「競争力のある企業は現場力がある」と遠藤功氏(ローランド・ベルガー会長・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授)はいう。現場力とは何か。遠藤氏は「自ら問題を発見し、自ら解決する能力」であると定義する。

 トヨタや花王、小林製薬などの競争力の高い企業が厳しい経済環境の中でも好業績をたたき出しているのは、現場のスタッフひとりひとりが企業の業績向上を担っているという当事者意識を持ち、山積する問題を解決する実際的な行動を継続して行っていることにある。これを可能にするには、現場において、問題を発見できる仕組みがなければならない。そのために取り組むべきが「見える化」への対応であるとする。

 7月19日に開催されたMercury World Japan 2006(主催:マーキュリー・インタラクティブ)で講演した。同講演において、「見える化」という言葉が頻出したことからも明らかなように、現場が強い企業の代表例としてトヨタが挙げられ、トヨタの年間改善提案数や改善提案実行率などの数字がその証しとして紹介された。そのほかに、前述したとおり、花王や小林製薬の例がひかれたが、これらの企業が強い現場力を持つ条件を、遠藤氏は7つに絞り込んで聴衆に示した。そこには、「脱・事なかれ主義」や「主権在現」(失敗する権利・学習する現場)「自律的サイクルを埋め込む」「見える仕組み」「継続する力」などのいわゆる企業改革に必須とされるキーワードが列記された。

 トヨタの生産方式をIT業界に適用すべきであるという声は、これまで何年にも渡ってさまざまな人物の口から語られてきた。IT業界が作り出す工業品としてのソフトウェアは、自動車や石鹸などの製品とは違って手で触れることができない。この不可視性は、同時に製作工程の不可視性とも相まって、生産効率の悪さを引き起こす最大の要因である。加えて、業界としての歴史が浅いために、作業工程の標準が整備されておらず、さまざまな基準も不明確である。

 このような状況を勘案し、遠藤氏はIT業界の現場力は30点だとした。目先の業務に忙殺され、問題発見・解決能力が弱いと指摘したが、一方で、「30点ということは大きく改善の余地がある」と希望を告げた。いまなら、合理的かつ科学的なオペレーション(=現場)の仕組みを構築した企業が「勝ち組」に成り上がれる。標準化の推進、見える化、測る化による業務プロセスの進化、問題発見・解決能力の高い人材の育成が具体的なソリューションとして挙げられると遠藤氏はいう。

 世間で喧伝(けんでん)される見える化を推進するためのポイントとはどこにあるのか。遠藤氏が挙げるポイントは非常にシンプルだ。属人的ではなく、組織として「見え」ているか。ぼんやりとではなく、はっきりと「見え」ているか。必要なものが「見え」ているか。これらのポイントをクリアして設置した見える仕組みによって、組織内での情報共有が活性化する。次に、共有された情報は共通認識によって流通させなければいけない。例えば、道路信号が「見える化」の機能を発揮するのは、青と黄、赤という3種類の情報が何を指し示すかという共通認識が存在するからだ。「見える」ことが人の思考や行動様式を変え、それが組織活動に影響を及ぼすという自律的な運動を作り出せれば「見える化」の仕組みが組織内で起動し始めたことになる。

(@IT 谷古宇浩司)

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ローランド・ベルガー

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