電子タグの実証実験、説得力のある国際貢献目指す

2006/7/22

 「電子タグは欧米のものというイメージがあるが、日本から国際標準を提案していくフェイズ(段階)に入った」――経済産業省商務流通グループ流通政策課長 浜辺哲也氏は、7月21日に都内で開催された「平成17年度経済産業省電子タグ実証実験成果報告会」で、こう挨拶した。

経済産業省 商務流通グループ流通政策課長 浜辺哲也氏

 浜辺氏はソニー、東芝、日立製作所、松下電器産業などが設立した家電電子タグコンソーシアムによる、家電業界における実導入を目指した運用ガイドラインが、電子タグの国際規格策定団体である「EPCglobal」へ提案の段階に達したこと、さらに日本人がEPCglobalの国際物流関連グループで、共同議長に選出されたことを挙げた。さらにアクティブタグやEPCのネットワークインフラ関連で、日本から積極的な提案が行われていくだろうと話した。

 経済産業省が、2004年度に続いて2005年度も15億円を投じた電子タグ実証実験は、アプリケーションレベルに焦点が移る標準化作業において、日本が説得力をもって貢献することに役立つというのが同省の立場だ。

 2005年度に実施された電子タグ実証実験は計8件。国際物流/流通に関するもの、特定業界の構造改革を促進するもの、産業間連携を目指すものが中心となっている。

 産業間連携を目指すものの1つが、出版業界と音楽・映像ソフト業界の共通ICタグ採用による次世代メディアコンテンツストア実験。

 書籍・雑誌と音楽・映像ソフト(CDやDVD)は、メディアミックスが進む一方、両者を複合的に販売する店舗が増加している。しかしこの2つの業界の商品コード管理体系は異なっており、別個のレジで決済している現状がある。実験実施店舗ではこれをICタグで共通化するとともに、通常立ち読みできないコミック本の試読などのコンテンツを専用端末で提供した。

 来店者がある商品を手に取ると、メディアミックス関連商品の店内における位置を示すスマートシェルフや、ICタグへの移行を円滑化するためのバーコード・ICタグ併用POSレジが設置された。

 来店者に対するアンケートでは、98%が実験を肯定的に評価し、特にスマートシェルフや専用端末での試読機能は人気が高かったという。

 フューチャーストア推進フォーラムは、店舗経営の効率化だけでなく、顧客満足度向上を目的とした電子タグ利用を、百貨店、ファッション専門チェーン店、食品スーパー、GMS、コンビニエンスストアと幅広い小売店舗形態について、それぞれ別個の観点から実施した。

 ポイントとなったのは、店員に相談はしたいが、店に入ってもすぐに接客をしてほしくないという消費者心理に対応し、接客効果を高めるための電子タグの利用。

 例えば東京・銀座三越の高価格帯ジーンズ専門売り場では、各商品の在庫サイズがほぼリアルタイムで表示される電子棚札を設置。これにより販売員は、在庫確認のために来店客を待たせることがなくなり、来店客のストレス軽減に寄与したほか、対象商品に関する問い合わせ確率がほぼ倍増したという。

 東京・品川の食品スーパー、クイーンズ伊勢丹では、ワイン売り場で各商品にICタグを取り付け、スマートシェルフで商品を手に取るとさりげなく商品情報を表示する端末を設置した。これにより、実験実施前にワインを購入しなかった客が、実験中にワインを購入するケースが増えたという。

 しかしフューチャーストア推進フォーラムでは、実験を踏まえた技術面の課題として、電子タグの低コスト化やスマートシェルフの読み取り精度向上が不可欠とし、電子タグ規格の統一はもちろんのこと、装着方法の研究も欠かせないと結論付けている。

(@IT 三木泉)

[関連リンク]
平成17年度電子タグ実証実験の成果について(経済産業省)

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