「定額制ERP」で市場を切り開く、オラクルが中堅向け新戦略

2006/7/25

 日本オラクルと日本オラクルインフォメーションシステムズ(OIS)は7月24日、OISのERPパッケージ「JD Edwards EnterpriseOne」の拡販を柱とする中堅企業市場向けの戦略を発表した。包括性、低コストなど中堅企業のニーズに応えることで、国産ERPベンダ製品からのリプレースを狙う。日本オラクル、OISの営業組織やパートナー企業も倍増を目指し、「今年度(2006年6月-2007年5月)に中堅企業向け市場で3倍の成長を目指す」(OIS 代表取締役 村上智氏)としている。

米オラクルのシニア・バイスプレジデント ディック・ウォルベン氏(左)とOIS 代表取締役 村上智氏

 両社が狙うのは売上高100〜1000億円の中堅企業。米オラクル 日本アプリケーション・ビジネス担当 シニア・バイスプレジデント ディック・ウォルベン(Dick Wolven)氏は、中堅企業市場について、「1つのパッケージであらゆる業務に対応する包括性や、業務の変化に対応する柔軟性、ITスタッフを増員することなく運用できる経済性が求められる」と指摘した。国内では中堅企業の商習慣にきめ細かく対応する国産ERPベンダの製品が主流で、外資製品の存在感は高くない。ウォルベン氏は「ERPはすべての中堅企業に当てはまる」と話し、ERPパッケージを導入していない企業も含めて新規顧客を開拓する考えを強調した。

 戦略の中心とするのは同日、新バージョン「8.12」を発表したJD Edwards EnterpriseOne。製造業、卸業、不動産業を主なターゲットにしたパッケージで、会計やオーダー管理、SCM、生産管理、CRMなどのモジュールを持つ。国内では250社が導入。8.12では新たに営業支援アプリケーション(SFA)とサービス管理アプリケーションをモジュールに追加した。Oracle DatabaseとOracle Fusion Middlewareのバンドルも可能にした。

 中堅企業市場のうち特に売上高500億円以下の企業には、カスタマイズしないことを前提に低価格、短期導入で提供する「JD Edwards EnterpriseOne Rapid Start」を強く押し出す。Rapid Startは、コンサルタントなどの導入作業の量にかかわらず、見積もり時に提示した金額でカットオーバーさせる「業界初の定額制ソリューション」(村上氏)を採用。これまで「見込み生産プロセス対応版」を提供してきたが、新たに「個別受注生産プロセス対応版」を追加した。

 売上高100億円規模の製造業企業がRapid Startの会計、製造、販売、物流、購買などのモジュールスイートを導入した場合の価格は、ライセンス、導入、コンサルティングなどを含めて7500万円。導入期間は最短21週。カスタマイズを行うことが前提のEnterpriseOneでは、通常この3倍の価格がかかるという。

 中堅企業市場を担当する両社の営業、プリセールスは現状の40人を今年度中に70人規模まで増員する計画。二十数社のパートナー企業も2倍にすることを目指す。「Oracle E-Business Suite」の短期導入テンプレートで、建設、エンジニアリング、流通などの特定産業に特化した「Oracle NeO」も活用。ラインセンスや導入、サポート、パートナーを合わせた両社の中堅企業向けの売り上げ規模を100億円まで押し上げることが目標だ。

 国内の中堅・中小企業向けの業務アプリケーション市場にはマイクロソフトも近く参入する見通しで、国産ベンダ、外資ベンダの競争激化が予測される。ウォルベン氏は「マイクロソフトは脅威的なコンペティターだ」と話した。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
日本オラクルの発表資料(新戦略)
日本オラクルの発表資料(JD Edwards EnterpriseOne)
日本オラクルインフォメーションシステムズ

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